企業もスパイ機関も同じ CIAが説く意外な最強リーダー論
テネット元CIA長官(左)は人柄も行動も優れたリーダーだった CHARLES OMMANNEY/GETTY IMAGES
<優れたリーダーシップとは何か? CIAでリーダー育成プロジェクトを開発した元担当者が明かす組織を成功に導く大原則。本誌8/21発売号「CIAに学ぶ最高のリーダー論」特集より>
※本誌8/28号(8/21発売)「CIAに学ぶ最高のリーダー論」特集では、最強スパイ機関を最強たらしめる意外なマネジメント術に迫る。他に、米海兵隊リーダー11の鉄則、知性派国防長官マティスの本棚も公開。
皆さんは「優れたリーダー」と聞いてどんな人物を想像するだろうか。勝負ネクタイを締めた白髪の大企業家? それとも物語に登場する「白馬に乗った王子」だろうか。いずれにせよ、自信に満ちていて、勇敢で、力強く指揮を執っているイメージだろう。
リーダーシップに関する本や専門家の話は技術論が中心で、たいてい事業に成功した人の経験談や、成功したと宣伝したい人の自慢話であふれている。そして、そこには常に「トップ」を演じる人の存在や、見習うべき行動が示されている。ライバルより自信を持って行動せよ、積極的になれ、決断力を発揮しろ、などというように。
だがCIA(米中央情報局)で私が経験した限り、優れたリーダーはカリスマ的な人物というわけではなかった。良きリーダーとは集団や組織を成功に導くような一連の資質と行動を備えた人物のことだ。偉そうな風貌や冷淡になりがちな「強さ」よりも、人を育てる能力のほうがリーダーには重要だ。
CIAで専門知識と指揮命令系統が大切なのは当然だ。だが良きリーダーとなる鍵は軍事・諜報作戦の成功の鍵と同じ。集団力学を理解できる感受性と、構成員や組織全体を成功に導くようサポートできることこそが、米軍やCIAにおけるリーダーシップの核心と言える。
20年ほど前、米議会は当時のCIAに不満を抱いていた。CIA内部のリーダーシップ体制が貧弱だというのがその理由だ。その頃のCIAは幹部が攻撃的なことで知られており、彼らは部下に対する指導よりも作戦を優先していた。CIA内では「管理」は人間の仕事ではなく機械化された作業として、軽視されていたからだ。
ジョージ・テネットCIA長官から問題解決の指示を受けた人事部トップからの要請で、私はリーダーシップの本質を組織に浸透させるプロジェクトに参加することになった。
この作業を通じて、私は約20年の諜報活動の現場で学んだことについて、意識して考える機会を得た。いかなる組織においても(諜報機関でも企業でも軍隊でも、どんな民間の組織でも)リーダーは組織を「人間の集団」として扱うことが重要だ。リーダーシップとは、逆説的だがつまるところ個々の構成員の行動なのだ。だから、良き指導者や成功する組織は、あらゆる階級の構成員にリーダーシップの資質と行動とは何かを浸透させ、互いに協力するよう指導し、他の構成員の成功に貢献するようたたき込む。
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