トランプ「スパイ」説を追え
安倍首相ら世界の首脳はトランプのエゴをうまく利用してきた ILLUSTRATION BY LINCHEVSKA-SHUTTERSTOCK
<金銭力やエゴをくすぐられてプーチンに操られる大統領――諜報専門家が読み解く数々の疑惑と証拠の信憑性>
真実は時に、誰も口にできないほど恐ろしい。だが、あえて言おう。ドナルド・トランプ米大統領は諜報専門家が言うところの「ロシアの資産」だ、と。
つまりトランプは国家に対する反逆者であり、米国において最も重い刑罰に値する罪を犯している。アメリカ合衆国は南北戦争開始で大混乱に陥った1861年以来、最悪の憲政の危機に直面している――。
こんな「暴言」をなぜ吐けるのか。その根拠はあるのか。
トランプをめぐる事実の数々、彼の発言や政策からはある結論が導き出せる。トランプはロシア情報機関の故意の協力者(専門用語では「資産」、一般的に言えば「スパイ」)か、ロシア情報当局によって「意識しないまま」利用されている人物だ。この2つは二者択一的なものではなく、1人の人物がその両方になる場合もある。
米政治は昨年の初夏以来、トランプいわく「ロシア絡みのこと」に振り回されてきた。きっかけはFBIとCIAが、米大統領選にロシアが介入していると政府上層部に報告したこと。この問題はトランプの大統領就任後、米政権にとっての脅威かつ障害と化している。
MI6(英国情報部国外部門)元職員のクリストファー・スティールが昨年前半から調査・作成していた文書は、トランプの側近と家族がロシア情報当局の関係者や高官と何度も面会していた事実を指摘している(この文書は今年1月上旬、米メディアに全文が掲載された)。
トランプは1月下旬の大統領就任直後、自分に敵対的なジャーナリストを逮捕できるかと、FBIのジェームズ・コミー長官に尋ねた。否定したコミーが電撃解任されたのは5月。トランプに「忠誠を誓う」ことを拒否したためとされる。これを受けてFBIを管轄する司法省は、ロシア疑惑の独立調査を指揮する特別検察官にロバート・ムラー元FBI長官を任命した。
トランプとムラーおよびメディアが対立する構図のなか、米政治の危機は拡大を続ける。共和党指導部は党利のためトランプ支持を掲げざるを得ない状態のまま身動きが取れず、米国民の3分の2を占める反トランプ派は危機感を抱き、識者の間ではアメリカが今後10年以内に内戦に陥るとの見方が広がる。
諜報専門家の視点から、より幅広い文脈で一連の問題を捉えた場合、状況はトランプにとって破滅的だ。
ある人物が故国を裏切るように仕向ける際、情報当局者は4つの要素を活用する。「MICE」と総称されるその4つとは、マネー、イデオロギー、コアーション(脅迫)、エゴだ。トランプのケースでは、そのうちの3つが作用している。
リアリストが日本被団協のノーベル平和賞受賞に思うこと 2024.10.22
戦術で勝ち戦略で負ける......「作戦大成功」のイスラエルを待つ落とし穴 2024.10.08
カマラ・ハリスの大統領選討論会「圧勝」が、もはや無意味な理由 2024.09.25
共和党バンスvs民主党ウォルズは、あまりに対照的な副大統領候補対決 2024.09.03
全面戦争を避けたいイランに、汚職疑惑を抱えるネタニヤフが「悪夢の引き金」を引く 2024.08.20
大統領への道「勝負の100日間」ハリスの物語と夢のパワーがアメリカの命運を決める 2024.08.01
追い詰められた民主党が苦しむ「バイデン降ろし」のジレンマ 2024.07.20