コラム

ラジオを聴かない奴はなぜ馬鹿か

2021年06月30日(水)14時52分

彼らの動画の何が面白いのか。私にはさっぱりわからない。正直言って馬鹿の見る動画だと思う。同じYouTube動画を見るなら、日本人YouTuberが投稿する素人映像ではなく、専門家が撮影したアフリカサバンナにおける動物の高スピード動画を見る方がよっぽど為になる。が、全般的に「個」の知性が堕落した日本人はラジオよりもYouTuberが投稿する馬鹿らしい無教養の、何の作家性もない動画に殺到していくのだろう。

正直申し上げると、年を追うごとに日本人の知的レベルが下がってきていると感じる。年を経るごとに、年間2%ぐらいの単位で、日本人全般の知的水準が下がってきているように感じる。日本人はどんどん馬鹿になっていると思う。それに唯一といってよいほど抗うのがラジオだと私は思っている。

全国47局のうち44局が2028年までにFMに移行するのは、まず間違いなく確実な情勢であろう。もはやラジオを恒常的に聴くリスナーは、日本社会に於いての知的堕落を倦厭したリスナーだけであろう。ラジオ文化は続いていく。なくなることは無い。そしてラジオ文化が商業的に生き残るためには、AM局からFM局への転換が必要であることは言うまでもない。これにより2028年には、TBSラジオも、ニッポン放送も、文化放送も、TOKYO FMも、J-WAVEもAM/FMの垣根なく一直線にならぶ。

ここで起こる競争は、ラジオ界に新たな革新と昇華をもたらしてくれるに違いない。ラジオの領域に、最早腐敗した一部地上波やYouTuberと称する素人の動画の大量繁茂に嫌気がさしたユーザーが、更に更に一気呵成に大量流入することを願って止まない。ラジオこそ至高である。ラジオには真実がある。このどうしようもない、落下傘のようにゆっくりと堕落していく列島に於いて、知性と教養が辛うじて大量に残っている。ラジオは最後のザイオンだ。ラジオを聴かない奴は馬鹿だ。


プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

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