コラム

「日本会議」は衰退するのか?──神社本庁全面敗訴の衝撃

2021年04月01日(木)19時40分

日韓議員連盟には安倍前首相や麻生太郎氏も所属している事実がある。小選挙区や比例代表にあっては、たとえそれが1,000票足らずの加算であっても、とりあえず所属しておく価値を見出すのが当然である。日本会議の関連団体である「神政連」に自民党の保守系政治家がこぞって参画しているのは、彼らが「日本会議に操られている」のではなく、純全に1,000票単位の票が欲しいからであり、日本会議の影響力を斟酌した結果ではない。そもそも、日本会議には政治に影響を与えるだけの強大な力などはなから存在していないのだ。

苦悩する全国各地の神社経営者たち

前出の小川氏は、今次神社本庁にける全面敗訴判決と日本会議の影響の衰微如何について、次のように語った。


小川)今次の一審における神社本庁の全面敗訴について、日本会議全体にダメージ、衰微があるのかないのかと問われれば、正直なところ元来あまり関係が無いというところです。そもそも日本会議の枢機たる神社本庁が一審で敗訴したからと言って、神社本庁に所属する日本各地の神社の神主さんが、「日本の国体が損壊された」といって立ち上がって行動するという事はまずありえないでしょう

現在、日本各地にある本庁に所属する神社は、そんな世俗の民事裁判の行方など正直言ってどうでもよく、自身の神社の経営で精いっぱいで、本庁の動向にかまっている余裕はないのです。お祭りをどうするか。檀家へのケア・サービスをどうするか。

各地の神主はいま、自分の神社の経営維持に精いっぱいで、政治的な動向に関与する暇はない。特に昨年(2020年)から発生したコロナ禍で、神社への参拝客が減って、それに伴い当然のことお賽銭も激減する中、もっぱら自己防衛に終始しており、本庁が民事裁判で負けただの、或いは勝っただのという事案に関しては正直無関心で、構っている余裕すらないのでははないでしょうか。

小川氏の言う通り、日本会議の構成メンバーの筆頭に挙げられる神社本庁の政治力とは、辛辣に言えば所詮この程度にしか過ぎない。『日本会議の研究』により、日本会議や神社本庁が「政権を牛耳る秘密結社」のように吹聴されたが、はてさてその実態とは、経済不況で苦心する等身大の神主の声に他ならないのであった

よって日本会議は今次の判決如何に関わらず、緩やかに衰微していく時代の趨勢に飲み込まれていくのであろう。神社本庁を筆頭とする日本会議は、時の政権に関係なく、時代の必然的流れの中で、緩やかに枯死していく旧世界の互助団体なのかもしれない。

※当記事はYahoo!ニュース個人からの転載です。

※筆者の記事はこちら

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ

ワールド

米、ロシアが和平合意ならエネルギー部門への制裁緩和

ワールド

トランプ米政権、コロンビア大への助成金を中止 反ユ

ワールド

ミャンマー軍事政権、2025年12月―26年1月に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 3
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMARS攻撃で訓練中の兵士を「一掃」する衝撃映像を公開
  • 4
    同盟国にも牙を剥くトランプ大統領が日本には甘い4つ…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 10
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 8
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story