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麻生発言のように「戦争になる」ことから逆算する「手口」
戦争について勇ましい発言をした麻生自民党副総裁(写真は2020年) Kim Kyung-Hoon- REUTERS
<「国民には敵が攻めてくると言い、平和主義者のことは非国民と非難すれば、指導者の思い通りに動かすことができる」と、ゲーリングは言った>
8月31日、麻生太郎自民党副総裁は、横浜で開かれた「外交・安全保障」をテーマとした麻生派の研修会で講演し、「沖縄、与那国島にしても与論島にしても台湾でドンパチが始まることになれば戦闘区域外とは言い切れないほどの状況になり、戦争が起きる可能性は十分に考えられる」と、日本国内で戦争が起きる可能性について述べた。ウクライナ戦争以後、日本では戦争の可能性を煽ることで軍拡を進めようとする言説が優勢になりつつある。
沖縄知事選を睨んだ発言
麻生氏の発言の背景には、おそらく9月11日に投開票を控えた沖縄知事選での与党候補苦戦があるのだろう。各種世論調査では現職の玉城デニー候補が優勢であり、自民党が推す佐喜真淳候補は苦戦しているという。保守系候補の分裂に加え、旧統一協会問題で政府・自民党の支持率は低下しており、佐喜真候補自身も旧統一協会との関係があったことが報道により明らかになっている。
この劣勢を挽回するため、佐喜真候補を支持する人たちは盛んに安全保障環境の悪化を煽っている。それを踏まえると、麻生氏がこの時期にこうした発言をしたのも理解できる。実際に沖縄知事選に影響力を与えることができるかどうかはともかくとして、「外敵」の存在を強調するのは、政治家が求心力を回復しようとするときの最も古典的な方法だからだ。
「外敵」を作るのはナチスの手口
ナチスの最高幹部ゲーリング(1943年1月6日撮影) パブリック・ドメイン
「外敵」の存在を強調する政治手法として人口に膾炙しているのは、伝記作家ジョゼフ・E.パーシコが紹介している、ナチスの最高幹部、ヘルマン・ゲーリングが語ったという言葉だろう。「国民はつねに、その指導者のいいなりになるよう仕向けられます。国民にむかって、われわれは攻撃されかかっているのだと煽り、平和主義者に対しては、愛国心が欠けていると非難すればよいのです。このやり方はどんな国でも有効ですよ。」(ジョゼフ・E.パーシコ、白幡憲之訳『ニュルンベルク軍事裁判 下』原書房、2003年、171頁)
政治家が「外敵」の存在を強調するときは、第一に、このような政治手法の産物ではないかと疑ってかかるべきだろう。麻生副総裁は、かつて憲法改正について「ナチスの手口」に学ぶべきだと主張した。まさに今回の発言は、「ナチスの手口」を踏襲しているといえよう。
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