コラム

緊急事態宣言を無駄撃ちしている日本政府に絶対許してはならないこと

2021年01月13日(水)16時42分

医療現場の支援や検査拡充はどうなった

日本政府は、緊急事態宣言をうまく活用できていない。現在のような要請にとどまる場合でも、補償の徹底と医療現場の支援、大学あるいは他教育機関のオンライン授業化の推進、PCR検査の少なくとも韓国並みの拡充、陽性者の隔離の徹底、GoToの早期再開やオリンピックの開催の断念などと組み合わせ、感染の抑止のための一貫したメッセージを発信することによって、大きな効果を示すことができるだろう。

こうした現状でやれる手をまったく打っていないにも関わらず、日本政府は特措新型コロナウイルス対策の特別措置法について、罰則を設けるなど、より人権侵害への道を開くような改正を行おうとしている。1月9日には、強制入院措置に従わない感染者に罰金を課すという案が浮上していることが分かった。この案それ自体の是非はともかく、入院したくてもさせてもらえない感染者が激増している現実を踏まえているとは思えない案だ。

安倍前内閣もコロナに関しては、比較的感染者数が落ち着いていた時期に役に立たないマスクを配るなどして時間を無駄に使っていたが、同時に緊急事態条項を設ける憲法改正運動を推進していた。現行法体系で打てる手を打たずに、国家の権力だけを拡大しようとする動きについては、現在発令されている緊急事態宣言を支持するかどうかとは別の問題として、警戒しなければならないのだ。

プロフィール

藤崎剛人

(ふじさき・まさと) 批評家、非常勤講師
1982年生まれ。東京大学総合文化研究科単位取得退学。専門は思想史。特にカール・シュミットの公法思想を研究。『ユリイカ』、『現代思想』などにも寄稿。訳書にラインハルト・メーリング『カール・シュミット入門 ―― 思想・状況・人物像』(書肆心水、2022年)など。
X ID:@hokusyu1982

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