コラム

中国大陸ネットに「日本軍と共謀した毛沢東」の独自評論出現

2016年10月20日(木)06時30分

 中国ではいま、静かに、そして秘かに「中国共産党の歴史の真相」を明らかにしようという「志のある人々」が動き始めている。

 筆者が、完全に中共政権に見切りをつけて決別し、堂々と客観的事実を書いていこうと決意したのは、2012年前後のことだった。それまでは、もしかしたら生きている間に中国に民主が来るかもしれないという一抹の望みを抱いていたが、自分の残り時間と中国が民主化し、言論の自由を認めるときがくる(かもしれない)時期を考えたら、明らかに自分の残り時間の方が短い。

 あの時代を生き抜いてきた者たちが決意する最後の時間帯が、2010年辺りだったのだろうと思う。

 中国の政府高官に『毛沢東  日本軍と共謀した男』を書いたと、正直に告げたとき、彼は「よくぞ書いた! いずれ誰かが書かなければならない真相だ」と言ってくれた。

 今般の潘漢年の記事に関して、「なぜ削除されていないのか?」と聞いたところ、以下の答えが戻ってきた。

――共産党の中にも、いろいろある。胡耀邦はかつて言っただろう?「もし中国人民がわが党の歴史の真実を知ったら、人民は立ち上がり、必ずわれわれの政府を転覆させるだろう」と。その時期は、必ず来る。ただ、人民が知っても中共政府が倒されないようにするために、つまり「中共の統治で良かった」と人民が思えるように、貧富の格差を無くし、人民を平等に豊かにしなければならない。それを建党100年目の2021年と考えているのだが、現状では達成されそうにない。インターネットの普及により、言論は統制しにくくなっている。胡耀邦の予言が的中するのか否か、中国はいま試練に立たされている。それがこの記事であり、あなたが書いた本だ。影響は小さくない。

 日本では筆者が毛沢東に関する本を書いたことにより、筆者を反中反共と警戒して、避けるメディアが一部にある。中国政府に嫌われることを怖がっているのだろう。

 しかし、中国の「志のある人々」の間では逆だ。

「遠藤こそ、人民の味方だ」と書いてくれているコメントが散見される。中国政府高官の一部さえ、心の中では同じように思ってくれているのだ。

 日本と中国の、この逆転現象は、日本の一部の現実を反映していると、興味深く眺めている。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら

プロフィール

遠藤誉

中国共産党の虚構を暴く近著『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)がアメリカで認められ、ワシントンDCのナショナル・プレス・クラブに招聘され講演を行う。
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ難民キャンプ、イスラエルの空爆で8人死亡=医療

ワールド

ロシア西部クルスク州にウクライナのミサイル、6人死

ワールド

米、中国半導体設計会社をブラックリストに ファーウ

ビジネス

ユーロ圏消費者信頼感指数、12月はマイナス14.5
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「汚い観光地」はどこ?
  • 6
    国民を本当に救えるのは「補助金」でも「減税」でも…
  • 7
    クッキーモンスター、アウディで高速道路を疾走...ス…
  • 8
    「え、なぜ?」南米から謎の大量注文...トレハロース…
  • 9
    大量の子ガメが車に轢かれ、人間も不眠症や鬱病に...…
  • 10
    「中国を止めろ!」沖縄上空で米軍<核>爆撃機と航…
  • 1
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 2
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いするかで「健康改善できる可能性」の研究
  • 3
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達した...ここまで来るのに40年以上の歳月を要した
  • 4
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 5
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 6
    電池交換も充電も不要に? ダイヤモンドが拓く「数千…
  • 7
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 8
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 9
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 10
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story