コラム

サムスン電子「ラジオが聴ける冷蔵庫」を発売した理由は? 韓国人のラジオの時間

2016年01月22日(金)18時10分

 90年代までも、韓国の中高生はラジオの深夜番組を聞きながら、リクエストしたい曲や番組で紹介してほしいエピソードをはがきに書いてパーソナリティに送っていた。韓国の30代後半以上の世代は、ほとんどがラジオ番組にはまった思い出を持っている。代表的なラジオ番組はMBCの「星の光る夜に」。この番組のゲストに呼ばれることが一流スターの証とまで言われた。珍問難問続きの高校生人生相談コーナーも面白かった。

 MBCは、1995年までラジオ局宛てに寄せられたはがきを展示する「美しいはがき展示会」を開催していた。当時は1日2000通ものはがきがラジオ局に届いたという。自分の便りが選ばれてラジオで紹介されるよう、イラストを描いたり、カラフルにしたり、凝ったはがきを送る人が多く、MBCはそのはがきを捨てるのはもったいないとして展示会を開いたのだ。MBCは2014年、サムスン電子のスマートフォンを使って作成した「デジタルはがき」の公募を行ったこともある。

 インターネットの普及とともに、放送局はメールやホームページからリクエストを募集するだけでなく、放送局のWEBサイトからテレビやラジオをリアルタイムで利用できるようにしている。今テレビやラジオで流れている放送を、インターネット経由でパソコンやスマートフォンからも視聴できるようにしたのだ。

 地上波放送局は1998年あたりから「見えるラジオ」といって、スタジオ内にカメラを取り付け、生放送でDJやゲスト達の様子を見られるよう動画中継を行った。さらに、放送局ごとにラジオ専用アプリを開発、PCやスマートフォンにインストールすると、インターネット経由でラジオを聴きながら、今流れている曲名を確認したり、見えるラジオを視聴したり、パーソナリティとチャットをするようにリクエストしたり、エピソードを投稿したりできるようになった。

見えるラジオ

左:韓国の主要ラジオ各局のネット聴取用アプリ 右:韓国公営放送KBSのラジオチャンネルCOOL FMの人気深夜番組「スーパージュニアのキスよりラジオ」の見えるラジオ。番組の進行に合わせて、スタジオ内のパーソナリティ全員が見えるように画面を上下左右に分割することも。


 パーソナリティの発言にすぐ反応してチャットで応援したり文句を言ったりできるので、常に番組を作る側とリスナーが双方向でつながっていて生き生きしているのが韓国のラジオ番組の特徴でもある。双方向であるだけに時代を反映した番組作りになっている。昨年受験シーズンには、24時間道路の混雑状況をメインに流す交通放送ラジオ局が、大学受験特集と題して有名予備校講師をゲストに迎え、大学受験対策や入試問題の傾向について解説する特番を何時間も放送していた。生放送らしくリスナーから相談も受け付けていて、受験生の子を持つタクシー運転手さんが電話相談したり、交通放送とは縁がなさそうな専業主婦がチャットで相談したりしていた。

プロフィール

趙 章恩

韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、ウクライナ復興に凍結資産活用で合意も 和平

ビジネス

AIが投資家の反応加速、政策伝達への影響不明=ジェ

ワールド

不法移民3.8万人強制送還、トランプ氏就任から1カ

ビジネス

米中古住宅販売、1月4.9%減の408万戸 金利高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story