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4秒×1万回で11時間の睡眠を確保...ヒゲペンギン「超細切れ睡眠法」採用の切実な理由
今回の研究は、リヨン神経科学研究センターのポール=アントワーヌ・リブーレル氏らが19年12月上旬に南極キングジョージ島のコロニーで行ったものです。研究者たちは、卵を温めていた14羽のヒゲペンギンの托卵時間や睡眠状況などを様々な機器を使って調査しました。
たとえば、電極を埋めて脳波や首の筋肉からの筋電図を記録したり、加速度計とGPSを使って体の動きや姿勢、位置を測定したりしました。さらに、ビデオ録画によってヒゲペンギンたちの様子を直接観察し、その他の機器による観測データと組み合わせました。その結果、対象のヒゲペンギンたちは22.06±14.72時間(範囲:5.52~64.3時間)で抱卵役と海での採餌役を交代していることが分かりました。
次に、睡眠状況について調査が行われました。ペンギンを含む鳥類は、ヒトと同じくレム睡眠とノンレム睡眠を行います。レム睡眠は身体が休んでいて脳が活動している状態、ノンレム睡眠は脳が休んでいて身体は一定の緊張を保っている状態です。
レム睡眠の時のペンギンは、両目をつむり、頭部は脱力し、脳波は覚醒時に似ているという特徴を持つため、カメラの画面に入らないと覚醒しているのか睡眠しているのかは区別することは困難でした。
そこで研究チームは、鳥類の主な睡眠タイプである徐波睡眠に焦点を当てました。徐波睡眠とは、ノンレム睡眠を4段階の深さに分類した際に深いほうの2段階を示す言葉で、深睡眠とも呼ばれます。
機器測定と画像分析の結果、巣にいるペンギンたちは寝そべっている時も立っている時も徐波睡眠の状態を示し、平均3.91秒の「マイクロスリープ(超短時間睡眠)」を1日に1万回以上繰り返していました。
「寝るときは集団の中央ほど安心」というけれど
さらに、捕食者(ナンキョクオオトウゾクカモメ)の存在がヒゲペンギンの睡眠に及ぼす影響を調査するために、コロニーの中心(境界から2メートル以上離れたところ)に巣を作っている鳥と、コロニーの境界でトウゾクカモメにさらされて巣を作っている鳥の睡眠を比較しました。
動物は、集団で寝ることで捕食者の餌食になるリスクを薄めることができます。その際、集団の中央にいる動物は捕食者から最も遠い位置になるため、最大の恩恵を得られると考えられます。
実際、マガモについて調べた先行研究では「仲間に囲まれているときは安全なので両目を閉じ、両方の大脳半球を休ませて眠る。集団の端にいるときは片方の目を開けて、片半球的な睡眠になる可能性が高い」ことが示唆されました。
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