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マイクロプラスチック摂取の悪影響、マウス実験で脳への蓄積と「異常行動」が観察される
プラスチックの健康への悪影響は、海洋生物では早くから報告されていました。たとえば、比較的大きなプラスチック片の場合、イカやクラゲと間違えて食べたアホウドリやウミガメの消化管が傷ついたり、胃に残留することで満腹状態と勘違いした結果、栄養失調が起きたりするといいます。
プラスチックが微小粒子になると、小魚や動物プランクトンも捕食することができます。マイクロプラスチックは、周囲の海水中に存在する有害な化学物質(残留性有機汚染物質[POPs]など)を表面に吸着して運搬するため、海洋生物は物理的な摂食阻害を起こすだけでなく、有害物質を体内に取り込んで健康被害を受ける可能性もあります。
顕著な行動異常を確認
今回の研究を主導したロス博士は、マイクロプラスチックの哺乳類の健康への影響、とくに神経症状を調査した研究がほとんどないことから、様々な濃度のマイクロプラスチック入りの水をマウスに飲ませて、神経行動学的影響と炎症反応を探り、体内のどこに蓄積されているのかを調べることにしました。
老齢マウス(21カ月齢)と若いマウス(4カ月齢)のメスマウスを、それぞれ10匹ずつ4グループ作り、①普通の水、②低用量のマイクロプラスチック入り(1ミリリットルの水に対して0.0025ミリグラム)、③中用量のマイクロプラスチック入り(同0.025ミリグラム)、④高用量のマイクロプラスチック入り(同0.125ミリグラム)を3週間飲ませました。マイクロプラスチックは蛍光ポリスチレンを使い、蓄積の状態を見やすくしました。
3週間後、行動調査をすると、とくにマイクロプラスチックを飲んでいた老齢マウスでは明暗の好み(本来は明るい場所を嫌う)が変わったり、奇妙な動きをしたり、移動距離が増えたりするなど、顕著な行動異常が見られました。ロス博士はプレスリリースで、「これは人間の認知症に似た行動だ」「これらの行動はマイクロプラスチックの用量にはよらず、わずかな実験期間なのに変化が起こって驚いた」と語っています。
ロス博士らは、その後研究を進め、マイクロプラスチックが体内に入ると、脳に特異的なタンパク質であるGFAP(グリア線維性酸性タンパク質)が減少することを発見しました。これまでの研究から、GFAPの減少は、アルツハイマー病やうつ病など、いくつかの神経変性疾患の初期段階と関連しているとされています。