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過去10年で最多のスギ花粉? 本格化前に知っておきたい花粉症の歴史と最新治療法
花粉症の薬には、「どの過程を抑えるか」によって、②の段階を軽減する抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、③の段階を軽減するステロイド薬など数多くの種類があります。症状が重い人には、花粉が飛ぶ少し前から服薬を始める「初期療法」が効果的とされます。ただし、自分に合う薬に出会えるまでに時間がかかることもあります。
最新の治療薬は、20年に認可された抗IgE抗体オマリズマブ(ゾレア®)です。今までの治療薬とは異なり、①の段階で花粉によって産生されたIgEと結合し、IgEがマスト細胞と結合できなくすることで、アレルギー反応の元を抑えます。高い効果が期待できますが、薬価が高いことなどから、重症のスギ花粉症患者に対してのみ、花粉が飛散する時期限定で皮下注射を行うことができるようになりました。
舌下免疫療法は、花粉が飛んでいない時期にスギ花粉のエキスを少しずつ体内に取り込んで慣らしていく治療法で、発売前の臨床試験では2割の患者が完治、6割に軽減が見られました。アレルギー症状の根本的な治癒が期待できる唯一の方法ですが、治療期間が3~5年と長期間に及び、まれに重度のアレルギー症状を起こす可能性もあります。
レーザー治療は、鼻の粘膜を焼く手術です。花粉を付着しづらくしたり、腫れを押さえて鼻づまりを解消したりする効果があります。もっとも、粘膜は再生するので、効果が続くのは1~2年です。
「花粉症と食」にまつわるトリビア
医療機関に行くほど重症ではないが、何となく鼻がムズムズする、目がショボショボするので、食べ物やサプリメントで症状を軽くしたいという人も多いでしょう。もっとも、花粉症に効果があることをうたって市販されているものは、科学的根拠に乏しいものも少なくありません。正しい情報かどうかを見極める必要があります。
たとえば、甜茶(てんちゃ)は花粉症に効果があるお茶として知られています。ただし、甜茶は「植物学上のチャノキ(学名: Camellia sinensis)以外から作られる甘いお茶」の総称です。市販されている茶葉の種類は複数あり、「バラ科の甜茶」以外は効果がないと言われています。甜茶として最も有名なアマチャヅルはウリ科の植物です。
バラ科の甜茶については、日本企業によって行われた「バラ科の甜茶には甜茶ポリフェノールという成分が含まれていて、アレルギーの原因物質となるヒスタミンの過剰分泌の抑制に効果があるので花粉症を軽減する」という研究が、花粉症に効く根拠とされます。けれど、厚生労働省は甜茶(バラ科かどうかは不明)について聞き取り調査を行って「甜茶は効果の不確かな民間療法」と位置付けています。
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