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世界最大で最も珍しい「謎」のカットダイヤモンドが競売にかけられる
米カリフォルニア州ビバリーヒルズで撮影された「エニグマ」 (1月26日) Mario Anzuoni-REUTERS
<555.55カラットの黒ダイヤ「エニグマ」が、「宝石以上の存在」と言われる理由とは?>
国際競売会社のサザビーズは、2月3~9日に世界最大のカット済みダイヤモンドのオークションを行うと発表しました。
このダイヤモンドは555.55カラット(111.11グラム)の黒色のダイヤモンドで、「エニグマ(The Enigma;謎)」と名付けられています。約20年前から存在は知られていましたが、ずっと個人に所有されていました。競売に先駆けてドバイ、ロサンゼルス、ロンドンで公開されますが、このダイヤモンドが公開されるのも販売されるのも、今回が初めてです。
エニグマは重量と起源という2つの理由から「歴代で最も珍しいダイヤモンドである」と言っても過言ではありません。
最も輝くよう計算されたカットデザイン
まず、原石からカットと研磨をした後の555.55カラットという重さは、歴代のダイヤモンドで最重量です。つまりエニグマは世界最大のカット済みダイヤモンドということになります。これまでの世界最大は、545.67カラットの「ザ・ゴールデン・ジュビリー」でした。
ザ・ゴールデン・ジュビリーは1985年に南アフリカで発掘された755.5カラットの原石からカットしたもので、オレンジ色がかった濃い茶色をしています。原石から取り出す際は、ダイヤモンド研磨師であるガビ・トルコフスキー氏が新しく考案したファイアー・ローズ・クッション・カットを施し、それまで世界最大だった「カリナンⅠ」よりも重くなるように注意深く磨かれました。約3年かけて研磨し終わると、カリナンⅠよりも15.37カラット(約3グラム)重くすることに成功しました。その後、1997年にタイのラーマ9世にゴールデン・ジュビリー(即位50周年)記念として献上されました。
ダイヤモンドのカットと研磨は、自由にデザインできるわけではありません。ダイヤモンドには割れやすい方向があるので、通常はそれを活かして原石から最大限に宝石が取り出せるようにカットします。
さらに、ダイヤモンドは輝かなければ価値がありません。
たとえば、婚約指輪用のダイヤモンドでおなじみのラウンド・ブリリアント・カットは、ザ・ゴールデン・ジュビリーをカットしたガビ・トルコフスキー氏の親族であるマルセル・トルコフスキー氏が1919年に考案したものです。ダイヤモンドを58面にカットして、上面から入った光は内部で反射して、すべての光が上面に戻るように設計されています。
世界最大級のカット済みダイヤモンドを意図して狙う場合は、原石からの歩留まりと割れやすい方向、輝きの強さのバランスを取りながらカットデザインを決めます。
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