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世界最大で最も珍しい「謎」のカットダイヤモンドが競売にかけられる
では、エニグマはどのようにカットをされたのでしょうか。
今回、サザビーズに出品する持ち主は、原石で手に入れてカットを依頼する時に「お守りとして意味を持たせる」ことにこだわりました。中東の護符である「ハムサ(ミリアムの手)」をモチーフに、原石を55面、555.55カラットにしたいと希望します。ハムサは「人間の手の5本指」のシンボルです。
研磨には約4年かかりましたが、ザ・ゴールデン・ジュビリーよりもさらに9.88カラット(約2グラム)重い、予定通りのデザインと重量を持った世界最大のカット済みダイヤモンドが誕生しました。エニグマは2006年に、世界最大のカット済みダイヤモンドとしてギネス世界記録に認定されました。
地球外からやってきた?
次に、エニグマの起源を見てみましょう。
価値の高い宝石は、販売前に必ず鑑別されます。鑑別とは、宝石の種類を調べたり、天然か人工かなどの特徴を明らかにしたりすることです。
大手の宝石鑑定鑑別機関である米国宝石学会(GIA)は、エニグマはカーボナード(黒ダイヤ)であると鑑別しました。
婚約指輪でなじみ深い、無色透明でキラキラと光るダイヤモンドは、単結晶(1つの宝石が1つの結晶でできている)です。地下のマントルで高温高圧の条件で生成され、キンバーライトという特殊な岩石に捕獲されて地表まで運ばれます。ダイヤモンドは理論的には炭素だけでできていて無色ですが、一部の炭素が窒素と置き換わると黄色くなったり、結晶構造に歪みが生じるとピンク色になったりします。
いっぽう、カーボナードは多結晶のダイヤモンドです。1つの宝石の中には、ダイヤモンドの微細な結晶が集合しています。
カーボナードは地表近くの堆積物の中から見つかることが多く、どこで生成されたかは未だにはっきりとはわかっていません。詳しく分析すると、隕石のみに見られる鉱物のオスボルナイト(窒化チタン)を含んでいることが多く、カーボナード自体が地球外からやってきた、あるいは地球に隕石が衝突することで作られ、オスボルナイトが不純物として入り込んだと考えられています。
カーボナードも理論的には炭素のみでできていますが、ダイヤモンドとは異なって色は黒や茶色、灰色のものがほとんどです。産出量が少なく希少価値がありますが、無色や魅力的な色のダイヤモンドと比べると宝飾品としてはあまり需要がなく、高価では取引されません。けれど、天然のカーボナードを模してダイヤモンドの微小結晶を焼結させた人工素材(PCD = polycrystalline diamond) は工業用カッターとして重宝されています。ダイヤモンドの単結晶には割れやすい方向がありますが、多結晶にすると微小結晶内で割れが収まるため耐久性に優れるからです。
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