コラム

MISIA、ヒゲダンの歌声「1/fゆらぎ」に見る、音楽と科学の深い関係

2021年11月23日(火)11時25分

伊福部教授の叔父は、ゴジラの映画音楽などで知られる作曲家の伊福部昭氏です。伊福部教授は、緊急地震速報のチャイムに「ゴジラ音楽」のフレーズを取り入れることも考えましたが、「よく知られていて恐怖心を煽る面もある」と考え、昭氏の「シンフォニア・タプカーラ」の第三章冒頭部の和音を参考にしました。C調に転調して、アルペジオ(和音を構成する音を低音から一音ずつ連続して鳴らす)にしたのが「ド・ミ・ソ・シ♭・レ♯」のフレーズです。

伊福部教授は①アルペジオの速度を早くする、②「ソ・ド・ミ・シ♭・レ♯」に順番を変える、③フレーズの2度目は半音上げるなどの工夫を凝らして、実際のチャイムを作りました。

心地よい音楽も人々の生活を豊かにしますが、聴くとビクリとする緊急地震速報のチャイム音も命を守るツールとして私たちの生活に根ざしています。音と人の関係は深淵と言えるでしょう。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト/博士(理学)・獣医師。東京生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第 24 回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)など。

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