コラム

キャラクター型チャットAIという新メディア

2023年08月09日(水)11時50分
character.ai

Photo: character.ai

<アニメやゲームのキャラクターなどになりきったキャラクター型のチャットAIが注目を集めている>

*エクサウィザーズ AI新聞から転載

キャラクター型チャットAIという新メディア

ChatGPTを中心にチャット型AIが世の中を席巻している。その進化ぶりは凄まじく新しい用途が次々と開発されている。中でも注目すべきは、アニメやゲームのキャラクターなどになりきったキャラクター型のチャットAIだ。キャラクター型チャットAIのプラットフォームcharacter.aiによると、月間2億8000万件のアクセスがあり、ユーザーは1日平均2時間、1回のセッション当たり平均30分もAIとの会話を楽しんでいるという。YouTubeの平均視聴時間が20分と言われていることから、巨大メディアが登場したわけだ。米Meta社も、同社運営のFacebookやInstagram上で、キャラクター型チャットAIプラットフォーム事業に乗り出す計画が明らかにしており、新たなメディア戦国時代の幕開けとなりそうだ。

character.ai社のサイトにアクセスすると、ゲームやアニメのキャラクターを始め、テレビや映画のスターなどの成り切っているチャットAIがずらっと並んでいる。イーロン・マスク氏など著名人のように受け答えするチャットAIもある。同社に出資している著名ベンチャーキャピタルAndreessen Horowitzの公式ブログによると、今年3月の時点でキャラクター数は270万を超えたという。自分好みのキャラクターを選んで、会話を楽しめるわけだ。(ソース:Andreessen Horowitz

また娯楽以外の目的のキャラクターも存在する。文書作成が得意なキャラクターや、プログラミングが得意なキャラクター、英会話の練習相手になってくれるキャラクター、スピリチュアルな人生相談に載ってくれるキャラクター、健康習慣を支援してくれるキャラクターなども存在する。

こうしたキャラクターは、実はユーザーが作成している。character.aiのサイト上の作成ツールを使えば、誰でも簡単に自分好みのキャラクターが作れるという。同サイトの案内AIによると、だれでも使えるオープンなキャラクターに加え、特定のユーザー限定のクローズドなキャラクターも作れるという。また自分の所有データを学習させて、特定の事象にだけ詳しいキャラクターも作れるらしい。

一方、英Financial Timesによると、Metaは同様のキャラクター型チャットAIのプラットフォームを開発中で、9月の開発者向けイベントで発表する見通しという。リンカーン米大統領に成り切ったチャットAIや、旅行アドバイザーのチャットAI、サーファーのチャットAIを開発しているのだとか。こうしたAI開発のためにNVIDIAの半導体を1万個以上確保したらしい。(ソース:Financial Times

開発したチャットAIはFacebookやInstagram上で展開するもようだ。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story