コラム

チャット型AIは幻滅期に入ったのか

2023年07月20日(木)16時40分

自律エージェントとは、最終的な目的を与えれば、その目的を達成するために何をすべきかを自分で考えて、実行していくAIの機能のことだ。どんなことが可能なのか、実際に僕が自律エージェントを使った体験談を書いたので、そちらを読んでいただければと思う。

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今のチャット型AIは、自然言語で質問に答えてくれるだけ。人間に話すような話し方で質問すれば、普通の言葉で言葉で回答してくれるというレベルだ。エージェント機能が搭載されれば、質問に答えてくれるだけでなく、アクションまで起こしてくれる。

例えば今なら、「赤坂周辺でデートに使えるような美味しいイタリアンのレストランを教えて」と聞くとチャット型AIは、レストランをいくつか教えてくれる。ところがエージェント機能が搭載されると「デートに使えるレストランを探して、今週金曜日午後8時から二名で予約しておいて」と命令すると、そのレストランのWebページにアクセスして予約してくれる、といったことができるようになる。

Meta(Facebook)のMark Zuckerburg氏は、こうしたことが可能なチャットボットをインスタグラムなどのSNSサービスに「そう遠くない将来に搭載する」と明言しているし、パーソナルAIを開発中の注目ベンチャーの米Inflection AIのMustafa Suleyman氏は「数ヶ月以内に実装する」と語っている。

最初は、レストランを予約する、といったシンプルなタスクしかできないかもしれないが、いずれ「夏休みの家族旅行を計画して、家族の意見を聞きながら調整し、新幹線の切符の手配からホテルの予約まで全部やって」といった命令にも上手に応えてくれるようになるだろう。その後も次々と可能なタスクの種類を増やしていくと見られている。

多くのユーザーがシンプルな質疑応答の機能に飽きたり、幻滅したとしても、自律エージェントという新しい機能の搭載がすぐそこにまできている。ChatGPTが幻滅期に入ったとしても、言語AI自体の進化はまだまだ終わりそうにない。

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プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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