コラム

「AutoGPT」だけじゃない──自律エージェントの住む街など最新事例4選

2023年05月18日(木)14時30分

単独エージェント型

単独エージェントとしてはAutoGPTがその代表例。短期と長期のメモリと検索機能、GPT3.5やGPT4を利用して、自らタスクを考えて実行する。詳しくは、「『AutoGPT』は何がすごいのか? 実際に非エンジニアが「記者ボット」を自作してみた」という記事に書いたが、「新技術に関する原稿を書きたいので、ネットを検索して最初の技術動向を調べて」と命令すると、TwitterやYouTubeから最初技術の動向を調べて報告してくれた。

【関連記事】「AutoGPT」は何がすごいのか? 実際に非エンジニアが「記者ボット」を自作してみた

しかも「新技術に関するインフルエンサーを探す」「新技術に関するユーザーの感情分析」など、自分では思いつかないようなタスクを次々と勝手に考えついては勝手に実行。自分で性能のいいAIにあっという間に進化していった。

AutoGPT登場の衝撃は大きく、3月30日に登場後まもなくTwitterのトレンドワード1位になったほか、開発者向けのサイトGitHubで10万個以上の星マークがついている。同サイト上でここまで注目を集めたプログラムは珍しいという。

2つ目の単独型自律エージェントの例は、「BabyAGI」だ。

BabyAGIは、AutoGPT同様に、ユーザーが簡単な指示を出すだけで、その意図をくんでタスクを次々と設定し、次々と実行していく。AutoGPTとの違いは、AutoGPTはタスクを1つ1つ決めて、それを1つ1つ実行していくが、BabyAGIは最初に幾つかのタスクを1つのタスクセットとして決めて、それを実行。1つのタスクセットを実行し終わってから、次に何をするのかを決めるやり方。この方法だと、より複雑な目的に向いているとみられている。

このBabyAGI、実は元マイクロソフトの伝説のエンジニアと呼ばれる中島聡氏の長男で、シアトル在住のベンチャーキャピタリスト中島洋平氏が開発した。BabyAGIのコードがAutoGPTのそれに比べて簡潔なので、多くの開発者が利用し、既に派生プログラムが多数生まれている。米誌Fortuneは「BabyAGI is taking Silicon Valley by storm(BabyAGIがシリコンバレーで旋風を巻き起こしている)」と絶賛している。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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