コラム

「AutoGPT」だけじゃない──自律エージェントの住む街など最新事例4選

2023年05月18日(木)14時30分

複数エージェント型

一方複数エージェント型の代表例は「CAMEL」。「Communicative Agents for "Mind" exploration of Large Scale Language Model Society」の略で、自律エージェントを2体作り、2体の間で対話しながら作業を進めていくというもの。

論文の中の応用例では、人間が「株売買ボットを開発する」という目的を設定し、1つのAIエージェントをトレーダー、もう1つのAIエージェントをプログラマーに設定。2つのエージェントが対話しながら、ボットの開発を進めていく様子が描写されている。1つのエージェントにプログラミングを任せれば、人間がその進展具合や性能を確認していく必要があるが、CAMELだともう1つのエージェントがその役割を果たしてくれるようになるようだ。

複数エージェント型のもう1つの例は、一部で「Westworld Simulation」と呼ばれる研究だ。Stanford大学とGoogleの共同研究として、4月7日に「Generative Agents: Interactive Simulacra of Human Behavior」というタイトルの論文が発表されている。

論文によると、25体のAIエージェントに性格や記憶を与え、相互に交流させる実験を行ったところ、それぞれのAIエージェントは公園の中を自由に歩き回り、カフェでお茶し、仲間と世間話をしたりした。そんな中、一人のエージェントにパーティーを企画させたところ、その話が全員に伝わり、相手を見つけてデートを申し込み、一緒にパーティーに参加するなどのエージェントも出たという。

米国では、複数のAIが住む仮想現実の環境の中に人間が迷い込むという内容のテレビドラマ『Westworld』が人気らしいが、この実験はまさにそんな環境を作り出すことに成功した実験と言える。

こうしたAIエージェントが作り出す環境は、ゲームやメンタルケア、外国語学習などに応用されるものと見られている。

今回紹介した自律エージェントは、どれもまだ発展途上。さらなる技術革新が必要なものが多いが、AIの研究開発が自律エージェントの方向に進むことはほぼ間違いない。ビジネスにおける生産性が大きく伸びる一方で、雇用にも大きな影響を与えることになるだろう。

ニューズウィーク日本版 「外国人問題」徹底研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年1月27号(1月20日発売)は「『外国人問題』徹底研究」特集。「外国人問題」は事実か錯覚か。移民/不動産/留学生/観光客/参政権/社会保障/治安――7つの争点を国際比較で大激論

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

シリア暫定政府、クルド人勢力に部隊統合巡り4日間の

ビジネス

ドイツ、26年GDP成長率予測を1.0%に下方修正

ビジネス

デンマーク年金基金、米国債売却へ 米欧対立「直接の

ワールド

米司法省、ミネソタ州知事らに召喚状 移民取り締まり
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 2
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 3
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 4
    「耳の中に何かいる...」海で男性の耳に「まさかの生…
  • 5
    「死ぬところだった...」旅行先で現地の子供に「超危…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    トランプが「NATOのアメリカ離れ」を加速させている…
  • 8
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 9
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 10
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 8
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 9
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story