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「悟りってどんな状態?」悟った50人に心理学的手法で詳しく聞いてみた結果とは(TransTech Conferenceから)
ちなみに論文のタイトルにあるPersistent Non-Symbolic Experiences(PNSE、継続的非記号体験)とは、宗教家たちが言うところの「悟り」「覚醒」のことで、fundamental well-being(心のベースにある幸福感)を示す学術用語。「悟り」「覚醒」という表現は人によって定義が異なり議論が前に進まないので、あえてよく分からない表現を使うことにしたようだ。瞬間的な幸福感ではなく「継続的」であるということが重要で、この調査では「少なくとも1年間は、心のベースに幸福感が常にある状態」と定義して被験者候補を探したという。
インタビューした50人がどんな人だったのかというと、平均年齢53歳。PNSE(悟り、覚醒)を最初に体験した平均年齢は41歳だという。全員が白人で、男性が78%。いろいろな手を使って女性PNSE体験者にコンタクトを試みたが、うまくいかなかったらしい。またほとんどの人が米国在住で、英語のネイティブスピーカー。約半数が何らかの宗教を信じているが、残りの半数は信じていない。ほとんどの人が何らかの形の瞑想を実践しているが、14%の人は瞑想をしたことがないという。つまりインタビューされたのは、割と一般的な米国の白人男性が中心ということになる。熱心な宗教家ではない。
インタビューした結果、PNSEには初期段階から、より高度な段階まで、いろいろなレベルがあることが分かった。ただこの論文の中では「段階」「レベル」という表現は使われておらず、「ロケーション」という表現になっている。初期段階よりも高度な段階のほうが優れているというな印象を読者に与えたくないからだという。悟っている人が偉くて、そうでない人がダメだ、というわけではないということだ。ただ日本語では「ロケーション」とするより「段階」としたほうが分かりやすいと思うので、この記事の中ではあえて「段階」と呼ぶことにした。事実、PNSEの最終段階になれば、感情がほとんどなくなるので、それが本当に幸せな状態なのかどうかは意見が分かれるところ。Martin博士も「最終段階の直前くらいが、人間として一番幸せな状態かもしれない」と語っている。
さて傾向としては、通常の意識からだんだんと変化し、最終段階では自我の意識がなくなり、雑念や感情、自己効力感が消える方向に進んでいくという。自己効力感とは、自分には自分の人生をコントロールする力があると感じることで、一般的には自己効力感が高いほど幸福感を味わうと言われている。ところがPNSEの最終段階になると、自己効力感さえが消えていくという。人生はただ目の前を流れていくだけで、それをどうこうしようという思いがなくなっていくからだそうだ。
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