World Voice

イタリア事情斜め読み

ヴィズマーラ恵子|イタリア

イタリア、即時振込1月9日から手数料が通常振込と同じに

Shutterstock-Andrey_Popov

イタリアでは、2024年1月9日から即時振込の手数料が通常の振込と同じになり、これまでかかっていた2~3ユーロ(約326円~489円)の手数料が撤廃される。
即時振込の利用が格段にしやすくなり、特に銀行間での送金がより迅速かつ便利になることが期待される。

これまでは、即時振込には高い手数料がかかり、利用者が少なかった。
しかし、新しい規制の導入により、即時振込のコストが通常の振込手数料と同等に設定されることになり、手数料が2~3ユーロ(約326円~489円)程度だった場合、それが無料または非常に低額となる可能性が高い。

| EU規制の影響とその背景

この変更は、EUの即時決済システムに関する規制の第二段階として導入されるもので、EU全体で即時振込の利用を促進することが目的となっている。
新たに導入される規則(2024年3月13日施行予定のEU決済委員会第886号規則)によって、すべてのユーロ圏内の銀行は、即時振込の提供と受け入れを義務付けられ、各銀行は自社の契約内容に基づき、通常の振込手数料と同じ水準で即時振込を提供しなければならない。

これにより、即時振込はより普及し、コストが大幅に削減されると同時に、金融業界の競争が加速し、銀行間での手数料やサービスの比較がしやすくなることが期待される。
利用者にとっては、即時振込の導入により、日常的な送金がより便利になり、コストも低減するため、より広範囲に利用されることが予想される。

| 詐欺のリスクとその対策

しかし、この新しい振込方法には注意点もある。
即時振込は送金が数秒で完了するため、取引の内容を確認するための「クーリング・オフ期間」(確認期間)がない。
誤送金や詐欺行為が発生した場合、送金先の受取人の同意がなければ、送金された金額を返金することができなくなる。

即時振込が普及すると、詐欺師による不正送金が増加する恐れがある。
送金が即時に完了することで、被害者が振込内容を後から確認する時間がなく、騙されやすくなる可能性がある。
もし不正送金が行われた場合、送金されたお金を取り戻すには、受取人の同意が必要となり、被害者がそのお金を取り戻すことが難しくなるリスクがある。

24時間365日利用可能、公共機関への支払いも迅速に

新しい規制により、即時振込は24時間365日利用可能となる。
よって、土日や祝日、深夜など時間帯に関わらず、送金が即座に行えるようになり、ユーザーにとって利便性が大きく向上するという。

特に、公共機関への支払いが即時振込に対応することにより、例えば税金や罰金の支払いが遅れた場合でも、ギリギリのタイミングで支払いが可能となる。
さらに、即時振込を使って、公共機関への支払いができるようになるのも良い。

従来の振込方法では数日かかることもあったが、即時振込を使用することで、最後の瞬間に思い出しても素早く支払いが完了する。

例えば交通違反の罰金や納税が、振込後わずか10秒で処理され、すぐに相手の口座に反映されることになるという。即時に罰金を納税すれば罰金額が少し安くなるという仕組みもイタリアにはある。

| 効率性への懸念

経済ジャーナリストのフェルッチョ・デ・ボルトリ氏は、

「2025年1月9日以降の即時振込導入には大きな課題が残る。銀行は本当に手数料を削減できるのか?また、効率化を進める中で、制裁対象者の確認や他の監視機能が適切に維持できるのか?」

と、懸念を示している。即時振込の普及が金融システムの効率化を促進する一方で、サイバーセキュリティや不正送金防止のための監視体制が一層強化される必要があるだろう。

 

Profile

著者プロフィール
ヴィズマーラ恵子

イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

Ranking

アクセスランキング

Twitter

ツイッター

Facebook

フェイスブック

Topics

お知らせ