ミャンマーでエンタメとクリエイトする日々
混迷のミャンマーにおけるエンターテインメントの役目
皆さんこんにちは。
映像プロデューサーの新町です。
ミャンマーでは新たな年を迎えた事になります。
そして、私がこのワールドボイスで連載を始めてからちょうど一年が経とうとしています。
クーデターなど無ければ一番良かったのですが、もしクーデターが起こっていなかったら恐らくこの連載も始まっていなかったのだと思うとなんだか複雑な気分です。
この一年沢山の方に読んでいただき、また様々な反響をいただきありがとうございました。
孤独な闘いではありますが、皆さんの声などが少なからず力になっています。
引き続き頑張っていきたいと思います、よろしくお願いします。
お知らせです。
4月16日より「映画を観て、ミャンマーを知るvol.2」が全国で開催されます。
昨年の新藤兼人賞、日本映画批評家大賞「新人監督賞」そして大島渚賞などを受賞された藤元監督の新作短編映画「白骨街道ACT1」とデビュー作「僕の帰る場所」の上映を含めたミャンマーのイベントです。
詳細は藤元組公式HPにも掲載されています。
https://fujimotofilms.com/myanmar
さてそのイベントの中で17日、長野上田映劇で行われるこのイベントで上映後にオンライン登壇いたします。
僭越ながらミャンマーに在住する映像プロデューサーとして映画を観に来てくださった方々にお話しをさせていただく予定です。
お誘い合わせの上ご参加いただければ幸いです。
長野にお知り合いがいる方は是非お伝えください。
よろしくお願いします。
さて、お知らせにもある通り「映画を観て、ミャンマーを知るvol.2」がいよいよ始まりました。
全国で一斉に開催されています。
昨日は各地で藤元組の方々が舞台挨拶をしたそうです。
今日はいよいよ私が長野のイベントの方で終演後挨拶をさせていただく予定です。
そういった訳で今回はその時に話そうと思っていることや、今ミャンマーでエンタメについて考えていることなどをまとまっていないながらも皆さんに共有できればと思っています。
色んなところで何度もお話させてもらっていることですが、エンターテインメントとは衣食住そして身の安全がそろってはじめて楽しめるものです。
それは十二分に理解をした上で、ではその条件が揃っていないところでのエンタメの意義は何なのでしょうか?
以前にも一度このワールドボイスで書きましたが、数年前のハロウィンの夜。
物売りの子供たちが私がつけていたパーティーグッズを凄く欲しがった事がありました。
正直この子達は生活が大変でハロウィンを楽しむなんて余裕はないと思っていました。
しかし、その時私があげた紙でできた帽子や、数百円で買ったおばけの人形などをその子たちはとても嬉しそうに、そして楽しそうに受け取りはしゃいでいました。
彼らから見るとお金持ちの外国人たちが壁の向こうでパーティーを楽しんでいる中、彼らは彼らなりにこのお祭りを楽しもうとしているんだという事が感じられた貴重な経験でした。
衣食住と安全が揃ってこそのエンタメなどと言うのはそれが当たり前のように揃ってしまっている人間の驕りでしかないのかもしれません。
では、クーデターが起こり国の中が内戦状態になってしまった国民はどうか?
一年に一度のバカ騒ぎができるこの水祭りの時期も多くの国民は静かに過ごしました。
もちろんバカ騒ぎをしたかった人たちも沢山いただろうし、実際にした人もゼロではないようです。
ただ、間違いないのは一年で最も暑い時期に最も熱くなるようなお祭りのパワーを今年は感じられませんでした。
少し地方に行けば激しい軍との戦闘があったり、軍人ではない一般人が住む村や町にまで空爆がされたりという酷い状況で何もかも忘れて浮かれる人は少ないのでしょう。
私を含めエンタメに関わる人間は今本当につらく大変だと思います。
2020年のコロナから始まりもう2年以上、まともにエンターテインメントをこのミャンマーで起こすことはできていないのです。
その道のプロたちでも別の仕事をせざるをえなかったり事実上の廃業をした人も多いと聞きます。
現状、様々なエンタメにまつわる事は可能性がゼロという言うほど出来ない訳ではないのかもしれませんが、様々な制限が課される中、以前のような活動は難しい状況です。
ではミャンマーからエンターテインメントは消えたのか?
そんな事はありません。
厳しい中でもアーティストたちは作品を作りあの手この手で世に出そうと懸命に動いています。
今はアーティスト活動ができなくても隙あらばと思っている人たちも沢山いるでしょう。
もちろん私自身もミャンマーのエンタメに関わる人間として何一つ諦めてはいません。
でなければ沢山の日本人が撤退帰国する中、不安を抱えながらもこの地に留まることは無い訳ですから。
ただ、使命感や義務にかられてかというとそれだけではないようにも思います。
やはり、ミャンマーは魅力的な国です。
魅力的で可能性に溢れている国です。
こんな状況でもそれを日々感じ続けています。
世間ではミャンマーの針は2年前から止まったままに見えるかもしれません。
ですが、多くの人々がこの国で今日も力強く生きているのは間違いありません。
ようやく、ようやくですが、この状況を打破すべく動き出すことができそうです。
エンターテインメントど真ん中といきたいところですが、焦らずじっくりとこの地でミャンマーの人たちとミャンマーの人たちにこそ必要なエンターテインメントを作っていきたいと思っています。
引き続きミャンマーという国とこの国のエンタメにご注目ください。
捲土重来、反撃の時は近いです。
それではまた明日。
著者プロフィール
- 新町智哉
映像プロデューサー。2014年からミャンマー最大都市ヤンゴンに在住。MAKE SENSE ENTERTAINMENT Co.,Ltd. GM。日緬製作スタッフによる短編コメディ「一杯のモヒンガー」でミャンマーワッタン映画祭のノミネートを皮切りに世界各国の映画祭で受賞。起業家、歌手、俳優としてもミャンマーで活動する。
Twitter:@tomoyangon
Instagram:tomoyangon
note:https://note.com/tomoyaan