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ダイバーシティ先進国ベルギーから観る欧州 LGBTQI 事情

ひきりん|ベルギー

同性婚導入17年経過のベルギー、新婚の40組に1組は同性同士

僕らはシビル・ユニオン締結時(ベルギーでは「法定同棲」cohabitation légale という名称のものが相当)、そして同性婚の書類手続きをするために区役所の窓口に何度も通ったが、その手続き時にもレズビアンカップルやゲイカップルの姿を毎回目撃したのは、偶然ではないのかもしれない(特に同性同士だからと言って窓口が別れている訳ではない)。また驚いたことに、結婚式当日も僕らの前に挙式した二人も全身お揃いの出で立ちでキメていたゲイカップルであった(筆者撮影 © hiquirin)。

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待ち望まれる日本での同性婚                          

日本国内に目を転じると、2015年の秋に渋谷区と世田谷区で「同性パートナーシップ」証明という形で公的書類の交付が始まった。自治体レベルで同性カップルが公に認められることとなり、病院での面会における家族扱いや賃貸住宅の入居時などの場面で円滑な対応が期待されている。この同性パートナーシップを認める動きは全国に広がっていて、市区町村だけでなく、都道府県レベルでも茨城県と大阪府で導入済みとなっている。ただその一方で法的効力の裏付けになるものがない為、所得税の配偶者控除、健康保険や年金の被扶養者、相続など、公的な恩恵は受けることができない。そのため同性カップルの間では次善の策として「養子縁組」をして、「父子」「母娘」の関係になることで相続や各種控除に備えている人々もいる。

前段階のシビル・ユニオンも併せて、各国とも憲法や民法改正を経て同性婚導入を決めてきた。日本国憲法は第24条1項で「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」と定めているが、少なくとも「両者の合意」と改正する必要があると思われる。先日辞任表明した安倍首相が目指していた第9条への自衛隊の明記などと同様、本気で同性婚導入を目指すのならばこれまで低調だった憲法改正論議を活性化する必要があるのではないだろうか。一部に民法改正で十分対応可能という意見もあり、今後の議論の行方に注目したい。いずれにせよ、同性婚は「想定外」というような不条理な状態を一刻も早く解消すべく、国会では取り組んでもらいたいものだ。

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式の最後には立会人と共にバルコニーに立ち国王気分で手を振り、広場に居る観光客から祝福を受ける。© Gaëtan Vincke


この連載では、ベルギーおよびEUの首都ブリュッセルよりヨーロッパの LGBTQI* 事情を定期的にお伝えしていきたいと思っている。


*LGBTQI : LGBTという言葉は日本でもここ数年でだいぶ浸透したと思われるが、耳慣れない他の頭文字と併せもう一度おさらいを。

L(Lesbian): レズビアン(女性同性愛者)
G(Gay): ゲイ(男性同性愛者)
B(Bisexual): バイセクシュアル(男女両方をどちらにも性愛感情を抱く両性愛者)
T(Transgender): トランスジェンダー(生まれた時の性別と、自分自身が心で感じている性別や生きていきたい性別が異なっている人々)
Q(Questioning, Queer) : クエスチョニング(自身の性自認・ジェンダーや性的指向・恋愛対象がはっきりしない人々)
または、クィア(性的マイノリティの総称、LGBTとほぼ同義)を指し、これら2つの違う意味を含んでいる。
I(Intersex): インターセックス(身体的な性が一般的に定められた男性と女性の中間、もしくはどちらとも一致しない状態の人々

他に A(Asexual): アセクシャル、エイセクシャル(他者に対して恋愛感情や性的欲求を抱くことのない無性愛者)や別の細分化したセクシャリティを加えて、LGBTQIA+ などと表現することもある。

 

Profile

著者プロフィール
ひきりん

ブリュッセル在住ライター。1997年ドイツに渡り海外生活スタート、女性との同棲生活中にゲイであることを自覚、カミングアウトの末に3年間の関係にピリオドを打つ。一旦帰国するも10ヶ月足らずでベルギーへ。2011年に現在の相方と出逢い、15年シビル・ユニオンを経て、18年に同性婚し夫夫(ふうふ)生活を営み中。

ブログ:ヨーロッパ発 日欧ミドルGAYカップルのツレ連れ日記 

Twitter:@hiquirin

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