ダイバーシティ先進国ベルギーから観る欧州 LGBTQI 事情
同性婚導入17年経過のベルギー、新婚の40組に1組は同性同士
同性婚導入に至る経緯は各国でさまざまだが、多くのベルギー人が驚いたのは「自由、平等、友愛」Liberté, Égalité, Fraternité の標語が国のあちこちで目に留まる隣国フランスでの激しい反対運動であった。フランスはベルギーに遅れること10年、2013年5月に同性婚を認めたが、それに先立つ同年1月にはパリで数十万人規模(警察発表34万人, 主催者発表80万人)の同性婚反対デモが行われ、その後法案可決まで数ヶ月に渡り大規模な抗議活動が繰り返されることとなった。10年先取りしていたベルギーでは法案議決で保守派による反対票は投じられたが、大きな混乱もなく同性婚が決まっていた。
他のヨーロッパ各国の状況を観てみると、フランスと同じくカトリックが強く、恋愛にも積極的と見られるラテンの気質の国、スペインとイタリアでは全く異なる状況が生まれている。スペインではベルギーに続いて2015年に早々と同性婚を導入したのに対し、イタリアでは今でも保守的な南部を中心に反対の世論が多く、G7の国で日本と並び同性婚が認められていない。ただ、そのイタリアも結婚に準じた権利を認める「シビル・ユニオン」が2016年に可決導入され、異性愛者とほぼ同等の権利を有することとなった。
また、北欧はじめ西側ヨーロッパ諸国は総じて既に同性婚が認められているのに対し、東欧ではシビル・ユニオンが徐々に広がりを見せるが同性婚導入までには至っていない状況で、地図上でもかなりのグラデーションがある。
新婚カップルの2.5%は同性同士
2003年に同性婚が認めらてからベルギー国内では多くの男性同士の"夫夫"、または女性同士の"婦婦"(どちらも男女間の「夫婦」同様、"ふうふ"と呼ぶ)が誕生している。人口約1100万人と日本の約10分の1以下のベルギーだが、毎年約1000組の同性婚が報告されて、その数は2018年までの累計で16000組以上にのぼる。これは結婚件数全体の約2.5%前後(40組に1組)を占める数字で、導入以来ほぼ一定水準で推移している。結婚に準ずるシビル・ユニオンを結んでいるカップルも多く(僕らも結婚前はその契約を結んでいた)、無作為抽出の世論調査ではなく、行政機関が正式に把握しているデータ上でもはっきりとこれだけの同性愛者が世の中に存在することの証明にもなっている。実際、僕らの結婚式で夫側の後見人となってくれたふたりは僕らの1ヶ月前に結婚したし、知人レベルまで広げれば同性婚やシビル・ユニオンを結んでいる同性カップルは十指に余るほどだ。
著者プロフィール
- ひきりん
ブリュッセル在住ライター。1997年ドイツに渡り海外生活スタート、女性との同棲生活中にゲイであることを自覚、カミングアウトの末に3年間の関係にピリオドを打つ。一旦帰国するも10ヶ月足らずでベルギーへ。2011年に現在の相方と出逢い、15年シビル・ユニオンを経て、18年に同性婚し夫夫(ふうふ)生活を営み中。
ブログ:ヨーロッパ発 日欧ミドルGAYカップルのツレ連れ日記
Twitter:@hiquirin