コラム

国民生活に深刻な影響を与えるビックテック規制の議論を公開せよ

2023年06月16日(金)16時11分

いかに莫大な資本と利益を貪るビックテック相手とは言え、合理的な根拠も薄弱な状況で、技術革新等の企業努力を否定する規制を導入することはあってはならないことだ。冒頭に述べたように、政府は「資料すら公開できない密室会議」で結論を出そうとするのではなく、是非とも会議の模様をオンラインで全公開した上で、Appleとの間で堂々と質疑を再度交わす平場の議論を実施してほしいと思う。

セキュリティに著しい問題を及ぼす

全ての会議をオープンな場で行うべき理由はもう一つ存在している。それはこの規制の導入がセキュリティに著しい問題を及ぼすことになるからだ。

アップストアに出品されているコンテンツは、Appleの企業努力によってセキュリティ面での一定のスクリーニングがかけられている。そのため、ユーザーはAppleが提供しているサービスに関するセキュリティ面を信用している面は少なくない。しかし、Appleに他社サービスの使用許可を強制した場合、そのようなセキュリティ面での保証は不可能になる。

従来までAppleのサービスを信用してきたユーザーにとって、突然低品質なセキュリティの商品を使わされるようになる、という話なのだから冗談ではない。消費者にとってはAppleが提供する限りなくリスクフリーに近いサービスを利用する権利が奪われることになる。特に日本の高齢者層はITリテラシーも低いため、同規制の導入は何も知らないままに狼の前に餌が撒き散らされるようなものとなるだろう。

同規制は国民生活に甚大な影響を及ぼす可能性が高い規制である。それにも関わらず、結論を得る予定となっている今月に行われた2回のワーキンググループの会議資料は非公開であり、なおかつ今年1月の会議以降は議事録すら全く公開されていない。政府の情報公開に対する意識の低さと隠蔽体質には驚かされるばかりだ。

政府は規制導入根拠に本当に自信があるなら、国民の知る権利を担保するため、ワーキンググループの全ての資料と議事録を今すぐ公開すべきだ。何でもかでも欧州の猿真似で新たな規制を導入するのではなく、国民に納得ができる論拠を示すことは当然だ。


プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

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