- HOME
- コラム
- ベストセラーからアメリカを読む
- ノーベル平和賞のヤジディ教徒の女性が、ISISの「…
ノーベル平和賞のヤジディ教徒の女性が、ISISの「性奴隷」にされた地獄の日々
受賞後の取材でもムラドは笑顔を見せなかった(10月8日、米ワシントンのナショナル・プレス・クラブでの会見) Kevin Lamarque-REUTERS
<ISISに侵略されたイラク北部では、男性と老いた女性はすべて殺され、若い女性は人間ではない「性奴隷」として扱われた>
2018年のノーベル平和賞の受賞者は、コンゴの産婦人科医デニ・ムクウェゲとイラク北部出身の人権活動家ナディア・ムラドだった。「戦争や武力紛争の武器としての性暴力を撲滅するための努力」が2人の受賞の理由だ。
ムクウェゲ医師は、コンゴで暗殺未遂や脅迫にあいながらも何万人ものレイプや性暴力の被害者を治療してきた長年の功績が評価された。一方、25歳の若いムラドが評価されたのは、武力紛争の性暴力のサバイバーとしての「声をあげる勇気」だ。
ムラドが注目を集めるようになったのは、2015年12月の国連安全保障理事会でのスピーチだった。過激派の「イスラム国(ISIS)」が少数民族ヤジディに対して行った集団虐殺と性暴力を調査し、公正な裁きと、現在もISISに拘束されたままのヤジディの救済を求めるものだった。このとき、ムラドはまだ22歳だった。そして、翌年に23歳で国連親善大使に就任した。これらの活動を援助したのが、人権弁護士のアマル・クルーニー(ジョージ・クルーニーの妻)だ。
アマル・クルーニーは、2017年11月に発売されたムラドの回想録『The Last Girl(最後の少女)』で「まえがき」も寄稿している。この回想録を読むと、ムラドが訴えたいヤジディ教徒の悲惨な状況が理解できる。
まず、イラクの主要民族はアラブ人とクルド人で、大多数がアラブ人だ。そして、宗教では9割以上がイスラム教(シーア派、スンニ派)である。外務省のデータによると、アラブ人のシーア派は約6割でスンニ派は約2割。そして、クルド人の大部分がスンニ派である。宗教少数派にキリスト教、ヒンドゥー教などもあるが非常に少ない。
ムラドは、イラク北部のシンジャール山に近いコチョ(Kocho)という農村で生まれ育った。この村に住むのはヤジディという少数民族で、独自の宗教を信じる宗教マイノリティでもある。イスラム教、キリスト教、ゾロアスター教など多くの宗教が混じり合ったようなヤジディは、イスラム教徒が多いイラクでは「邪教」として冷遇されてきた。
しかし、2003年にアメリカ軍が始めたイラク戦争がこの地方のヤジディの生活を変えた。スンニ派のアラブ人だったサダム・フセイン大統領が失脚(裁判の末に処刑)すると、シンジャール地方を支配するのはアラブ人からクルド人に代わった。クルド人とアメリカ軍はこの地方に携帯電話の基地局を設置し、学校を建てた。アメリカ軍とヤジディとの関係は良好で、一時的に彼らの生活は劇的に改善した。
しかし、その状況は長続きしなかった。
英王室から逃れたヘンリー王子の回想録は、まるで怖いおとぎ話 2023.01.14
米最高裁の中絶権否定判決で再び注目される『侍女の物語』 2022.07.02
ネット企業の利益のために注意散漫にされてしまった現代人、ではどうすればいいのか? 2022.03.08
風刺小説の形でパンデミックの時代を記録する初めての新型コロナ小説 2021.11.16
ヒラリーがベストセラー作家と組んで書いたスリル満点の正統派国際政治スリラー 2021.10.19
自分が「聞き上手」と思っている人ほど、他人の話を聞いていない 2021.08.10
-
港区 営業アシスタント「海外ネットワークを持つ外資系総合商社」フレックス/残業月10h/年休120日
コーンズ・アンド・カンパニー・リミテッド
- 東京都
- 年収500万円~550万円
- 正社員
-
一般事務/メーカー 残業なし/外資系企業/20-30代活躍中
株式会社スタッフサービス ミラエール
- 東京都
- 月給20万6,000円~
- 正社員
-
貿易事務/流通関連 駅チカ/外資系企業/20-30代活躍中
株式会社スタッフサービス ミラエール
- 東京都
- 月給20万6,000円~
- 正社員
-
経験5年必須/プリセールス/年商250億円企業/リモート可/外資系企業
SAI DIGITAL株式会社
- 東京都
- 年収400万円~750万円
- 正社員