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「諸刃の剣に...」アルカイダやイスラム国に忠誠を誓う世界各地の武装勢力の皮算用
だが、その約半数が外国人戦闘員との情報も)と呼ばれる武装組織を結成し、アルカイダのシリア支部として活動を開始した。シリア解放機構はフッラース・アル・ディーンの弱体化のため、多くの幹部やメンバーを殺害、拘束し、結局のところアルカイダのシリア支部は地域勢力との対立により弱体化した。
しかし、最大のリスクは地域住民からの反発と孤立だろう。過激な統治手法や暴力的な戦術は、住民の生活を圧迫し、支持を失うリスクを高める。イスラム国がシリアやイラクで支配地域を拡大した際、公開処刑や過酷なシャリーア法の適用は、一部の住民に恐怖と敵意を生んだ。
2016年のモスル解放作戦では、地元住民が連合軍に協力し、イスラム国に対する情報提供を行ったことが勝利の鍵となった。同様に、アフガニスタンでイスラム国ホラサン州がタリバンと敵対する中で、地元部族からの支持を失い、孤立を深めているケースも見られる。
このような反発は、長期的な支配を困難にし、勢力の衰退を加速させよう。
結局のところ、長期的にはマイナスか
イエメンを拠点とするAQAPは、アルカイダの主要な支部として、長年にわたり国際的な注目を集めてきた。利点として、アルカイダのブランド力を背景に、2015年のシャルリー・エブド襲撃事件や2009年のデトロイト航空機爆破未遂事件など、欧米を標的としたテロを計画・実行し、資金と戦闘員を獲得してきた。
また、イエメンの内戦に乗じて南部地域での支配を拡大し、税収や密輸で資金を確保するなど、地元での基盤固めにも成功した。
しかし、リスクとしては米国による執拗なドローン攻撃が挙げられる。2020年のカシム・アルリミ殺害をはじめ、指導者が次々と標的となり、組織の指揮系統が混乱に陥っている。
また、アルカイダが掲げる遠い敵戦略の重要性を共有しつつも、まずはイエメンにおける土着活動を通じて安定的な立場を堅持する必要があり、戦略的な矛盾や内部対立が生じている。
さらに、アフガニスタンを拠点とするイスラム国ホラサン州は、イスラム国への忠誠を背景に、2010年代後半から急速に台頭したが、利点として、2014年のカリフ宣言以降のイスラム国の勢威を活用し、タリバンに対抗する勢力として注目を集めた。
2021年8月のカブール空港自爆テロは、国際社会に衝撃を与え、若者や過激派を引きつける象徴的な攻撃となった。リスクとしては、タリバンとの敵対関係が激化し、アフガニスタン内で孤立する危険性が高まっている。
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