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「諸刃の剣に...」アルカイダやイスラム国に忠誠を誓う世界各地の武装勢力の皮算用
一方、イスラム国は2014年のカリフ国家宣言以降、シリアやイラクの油田を掌握し、年間数億ドルとも言われる収入を得ていた時期がある。これらの資金や物資は、忠誠を誓った分派にも分配され、地域での戦闘能力の向上に寄与する。
例えば、アフリカのボコ・ハラムはイスラム国との連携を深めた後、爆発物の製造技術や戦術を学び、ナイジェリア北部での攻撃を強化した。
さらに、地域での権威と正統性の確立がある。カリフや聖戦の名の下に行動することは、イスラム原理主義を掲げる勢力にとって、地域住民や他の過激派から支持を得るための強力な正当化手段となる。
アルカイダは遠い敵(欧米)との戦いを強調することで、グローバルなジハードの正統性を主張し、イスラム国はカリフ国家の再興を訴えることで、地域支配の権威を打ち立てた。この正統性は、特に宗教的価値観が強く根付く地域で効果を発揮する。
例えば、ソマリアのアルシャバブはアルカイダへの忠誠を表明した後、部族社会での影響力を拡大し、一時は国の南部をほぼ掌握するに至った。
外から内から二重の圧力に直面する
一方、リスクもある。
1つに、国際社会からの圧力である。アルカイダやイスラム国の名を掲げることは、一般的には国際社会からの反発や敵意を招くことになる。特に、欧米諸国はアルカイダやイスラム国を国際安全保障上の脅威とみなし、軍事的・経済的な圧力を強化してきた。
たとえば、米軍によるドローン攻撃は、2000年代以降、アルカイダやイスラム国の指導者を次々と標的にしており、2020年にはアラビア半島のアルカイダ(AQAP)の最高指導者カシム・アルリミが殺害された。
また、2022年のアフガニスタンでの作戦では、アルカイダの指導者アイマン・ザワヒリがドローン攻撃で死亡し、組織の弱体化がさらに進んだ。これらの攻撃は、忠誠を誓う地域勢力にも波及し、彼らの拠点やインフラを破壊してきた。
国連や欧米諸国による経済制裁は資金源を枯渇させ、活動の持続性を脅かすことになる。
また、内部対立と組織の分裂がある。忠誠を誓った組織の戦略や優先事項が、地域勢力の目標と一致しない場合には内部での軋轢が生じることになる。
例えば、シリアではアサド政権の打倒というローカルな目標を掲げるアルヌスラを前進組織とするシリア解放機構が誕生した2017年1月以降、同機構のジャウラニ指導者がアルカイダとの決別したことに反発するアルヌスラのメンバーたちは2018年2月、フッラース・アル・ディーン(1500人~2000人規模の戦闘員を有するといわれる。
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