コラム

日本企業の海外進出に注目高まる「グローバルサウス諸国と治安リスク」

2025年02月06日(木)12時41分

アフガニスタン発のテロリスクを警戒するインド

また、多くの日本企業の注目が集まるインドだが、幸いにもインドでは久しく大規模なテロは報告されていない。

しかし、インドでは宗教行事や政治イベントなどが開催される際、情報機関などが頻繁にテロ警戒アラートを発信しており、テロの潜在的リスクは常にあると見るべきだろう。


近年では2019年4月のスリランカ同時多発テロの際、テロを実行した地元のイスラム過激派ナショナル・タウヒード・ジャマーのメンバの中には、インドで活動するイスラム国支持者と連絡を取り合っていた者がいた。

また、2021年夏にアフガニスタンでタリバンが実権を掌握して以降、インドはアフガニスタン発のテロリスクを常に警戒している。アフガニスタンでは依然としてアルカイダが存在し、タリバンやハッカーニ・ネットワーク、インドが特に警戒するラシュカレ・タイバなどのイスラム過激派と密接な関係にあるとされる。

様々な統計があるが、アルカイダのメンバーは国内に400人から600人ほど存在し、インド亜大陸のアルカイダのメンバーも150人から200人いるとの統計もある。

そして、インド当局は今日、特にアフガニスタンを拠点とするイスラム国ホラサン州の対外的攻撃性のようなものを警戒していると考えられる。

イスラム国ホラサン州は昨年、イランやロシアで発生した大規模なテロに関与したとされ、欧州ではホラサン州の関係者たちが逮捕されるケースが相次いだ。

ホラサン州自身も中国やロシアだけでなく、インドへの敵意も強く示しており、インド当局はホラサン州、インド亜大陸のアルカイダなどのテロ組織がインド国内でテロを計画、実行することを警戒しており、同国にはこういった潜在的リスクがある。

プロフィール

和田 大樹

株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO、清和大学講師(非常勤)。専門分野は国際安全保障論、国際テロリズム論など。大学研究者として国際安全保障的な視点からの研究・教育に従事する傍ら、実務家として海外進出企業向けに政治リスクのコンサルティング業務に従事。

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