日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
ジョージアでは人と人の距離が近い。私にとっては、その温かさがとても心地よく感じるため、日本人ももっと心の内を互いに明かし合ったほうがいいのではないかと、日本の人間関係の淡泊さを少々物足りなく感じることもあった。
しかしジョージアとヨーロッパ諸国育ちの妻に言わせれば、その緊密さがかえって心の負担につながっているというのだ。
日本の公共交通では、車内で通話することを控えるようにというアナウンスが流れている。海外のように電車の中で電話をするくらいよいではないかと思うこともあるのだが、それも妻から言わせれば、「素晴らしい」とのこと。
ジョージアで電車やバスに乗っていると、隣に座っている人の家庭内の様子がすべて筒抜けで、いやが応でもプライベートな問題を聞かされる羽目になる。その点、日本は電車も街もとても静かだというのだ。
私が心地よいものは、妻にとっては煩わしい。逆に私が物足りないと思っていたことは、妻にとっては過分だったのだ。「隣の芝生は青い」がまさに夫婦間で、双方向的に成り立っていたということである。
しかし、確かに来日したジョージア人の誰もが「日本は街が平静だ」と口をそろえて言う。では、その街の平静さを保っているものは何か? それは人ではないだろうか。
東京の街を歩いていると「ジョージア大使ですよね。写真を撮ってもよいですか?」とよく声をかけられる。私はこのことを本当にうれしく思っており、いつでも大歓迎している。
しかし、中には「今日はプライベートのようなので、ご迷惑かもしれないと思い、お声がけしようか迷ったのですが......」と遠慮がちに説明される方も少なくない。
外国人観光客が日本に心地よさを感じるのは、こういった配慮のある、この距離感と洗練されたマナーなのだと思う。
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