コラム

「決められたこと」しかできない日本の介護は、もっと自由でいい

2025年01月31日(金)14時40分
トニー・ラズロ(ジャーナリスト、講師)
介護

もっと自由な介護が日本の高齢者を救う MAPO_JAPAN/SHUTTERSTOCK

<日本の介護現場は「決められたこと」しかできない。イタリアに学べる「もっと自由な介護」>

「悪いが、電球を取り換えてくれない?」

近所の家の前を通りかかったときに、そこで1人暮らしをする70歳代の知り合いにこう声をかけられた。


「いいですよ」。でも、この人は日々訪問介護の支援を受けている。その簡単な作業を済ませながら、ついでに質問してみた。ヘルパーさんは電球交換してくれないの? 「それは支援の対象外だって」

「安心して生活できるよう支援を行う」という訪問介護の仕事内容には、食事や入浴の介助などが含まれているが、多くの地域では電球交換は支援項目でない。これはちょっと不思議な話。支援の線引きが必要なのも分かるが、電球が切れた状態で人は「安心して生活」できるはずがないので、そのニーズに応じてもよさそうではないか。

隣人とのこのやりとりで、自分が育った米ニュージャージー州でのある出来事を思い出した。僕が住んでいたすぐ近くに同じような1人暮らしの高齢者がいた。縁あって、お小遣いを少しもらう代わりに僕が週1回、彼の家でさまざまな手伝いをすることになった。「支援」の内容は皿洗いや掃除が多かったが、雪かきでも電球交換でもなんでもやった。さまざまなことを学べ、実り多い経験として記憶に残っている。

今年、団塊の世代が75歳以上になる。その数は約2000万人。多くは、何らかの支援または介護が必要になる人たちだ。社会はそのニーズに応じられるようになっているだろうか? 成功例はあるが、地域によっては答えは否。2024年現在、訪問介護事業所ゼロの町村が107で、事業所が1つだけの市町村は272。事業所は今も減る傾向にある。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏がゼレンスキー氏を再び批判、「もっと感謝

ワールド

ウクライナは和平実現に実質外交、ゼレンスキー氏「米

ワールド

トランプ氏の和平への決意伝える、国務長官がチェコ外

ワールド

イスラエルがガザ南部攻撃、2人死亡 停戦合意の崩壊
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Diaries』論争に欠けている「本当の問題」
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 5
    バンス副大統領の『ヒルビリー・エレジー』が禁書に…
  • 6
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 7
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 8
    米ウクライナ首脳会談「決裂」...米国内の反応 「ト…
  • 9
    世界最低の韓国の出生率が、過去9年間で初めて「上昇…
  • 10
    生地越しにバストトップがあらわ、股間に銃...マドン…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 7
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 8
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 9
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 10
    日本の大学「中国人急増」の、日本人が知らない深刻…
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story