ガチ中華ってホントに美味しいの? 中国人の私はオススメしません
ガチ中華の代表格「火鍋」 BOYLOSO/SHUTTERSTOCK
<ここ2~3年、ブームになっている「ガチ中華」。店員に日本語も通じない「本場の中華料理」とのことだが、中国人にも、日本人にも、私は警鐘を鳴らしたい>
日本の「ガチ中華」ブームに違和感を覚えている。この言葉、2022年の新語・流行語大賞にノミネートされ、ここ2~3年で広く知られるようになった。
半ばチャイナタウン化している池袋には、そのガチ中華のフードコートが3つもある。「いつか食べてみたい!」「友人に連れて行ってもらい、ガチ中華デビューした」、そんな日本人も増えているようだ。
でも正直、いわゆるガチ中華を私はおすすめしない。
ガチ中華は、一般には「日本人の好みに合わせて作られたものではなく、中国人が実際に食べている本場の中華料理」を指すとされる。炒飯(チャーハン)や餃子(ギョーザ)、ラーメンなどが中心の「町中華」と対になる概念、なんて説明もある。
実際に行ったことのある人なら分かると思うが、メニューは中国語だけ、店員は日本語が通じない、という店も少なくない。そんな「ガチな(本気の)」雰囲気もまた、日本人を引き付ける理由の1つかもしれない。
中国4大料理、8大料理、10大料理、12大料理?
日本では通常、北京料理、上海料理、広東料理、四川料理が「中国4大料理」と呼ばれる。ただし、中国には8大料理、10大料理、12大料理といった分類の仕方もあり、つまり中国の料理は本来、それだけ多様で、それに伴う豊かな食文化があるのだ。
それに対し、ガチ中華は(私に言わせれば)辛い料理ばかり。食材に内臓を使うものも多く、豚の血やアヒルの血などと一緒に煮込む火鍋(写真は一例)はその代表格だ。
中国では10年ほど前にこの火鍋がブームになり、全国各地に火鍋のチェーン店が増殖。それから時を置かずして日本や他のアジア圏にも火鍋店が広がっていった。店は中国のローカルな雰囲気を感じさせる造りとなっているものの、内装は結構小じゃれていて、主なターゲットは若者だ。
日本でも若い中国人たちが池袋や高田馬場にあるガチ中華の店に行き、中国人の仲間と中国語で会話しながら、辛い火鍋に舌鼓を打っている。せっかく日本に留学したのだから、郷に入れば郷に従えで、もっと日本料理に挑戦すればいいのに──と思わずにいられない。
私も30年以上前に来日した当初は日本食が口に合わなかったが、いろいろな料理に挑戦し、日本人の舌の繊細さに感動するまでになった。それとともに日本語も上達し、日本社会に溶け込めたのだ。