コラム

便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

2024年04月18日(木)19時00分
カン・ハンナ(歌人・タレント・国際文化研究者)

一方で、キャッシュレス化の推進がもたらす弊害もあるだろう。特に、高齢者への配慮は必要かもしれない。スマホなどを扱い切れず、現金主義の高齢者を置き去りにしていいのかという懸念も根強い。

韓国のようにキャッシュレス決済率が90%を超えるような社会でも、こういった問題は解決できていない。

低所得者の場合であれば、クレジットカードの発行自体が非常に厳しく、デジタル社会で疎外されてしまうという問題が表面化している。日本もキャッシュレス決済が進めば進むほど、世代や社会的立場などによってさまざまな問題が浮き彫りになるだろう。

訪日外国人客の中には日本のおもてなし文化が好きな人が多い。細やかな文化に触れられる機会なのに、お店の注文や決済が機械で行われるようになったら日本の良さを感じられる場所が減ってしまうと考えるのは行きすぎだろうか。

個人的に私は、日本のお店に入る際に「いらっしゃいませ」と笑顔で挨拶してくれたり、お会計をする際に「ありがとうございました」と丁寧にお辞儀してくれる姿に、日本人の優しさを感じている。利便性や効率も大事だけれど、ささやかな日本らしさを残しながら、世界基準のデジタル決済社会になってほしいと願っている。

ありがとうと話しかけたら
 コマワヨと答えてくれた
  日なたのおじさん
   ──カン・ハンナ

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ソウル出身。2011年に来日し、2020年に歌集『まだまだです』で現代短歌新人賞受賞。NHKラジオ「ステップアップハングル講座」に出演し、起業家としてコスメブランドも立ち上げた。著書に『コンテンツ・ボーダーレス』

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