コラム

日本は世界に誇るファッション大国...だからこそイラン女性の戦いを応援してほしい

2022年11月03日(木)11時41分
石野シャハラン
イラン新聞

デモのきっかけとなった女性マフサ・アミニの写真を掲載した新聞(テヘラン、9月18日) Majid Asgaripour/WANA (West Asia News Agency) via REUTERS//File Photo

<世界的デザイナーからコスプレ文化まで──。「ファッション大国」の日本人にこそ、イラン女性たちの自由を求める戦いに心を寄せてほしい>

私の生まれた国イランは、日本人の皆さんには、数年に一度デモをしている国、と見えているだろう。毎回派手にデモするわりに体制は変わらないイランだが、今回は少し違う。5週間以上続いていることも異例だが、女性、しかも若い年代の女性がデモの中心となっていることも異例である。

世界経済フォーラムが発表した最新のジェンダーギャップ指数ランキングでは、日本は116位でイランは143位。だがイランの女性は、理不尽なことを理不尽だと言える強さがある。今回のデモに参加している女性たちの多くは20代で、怖いもの知らずの世代である。

彼女たちは、ヒジャブと呼ばれるスカーフの強制着用に抵抗していて、明るい将来と自由な未来のため命懸けだ。彼女らのスローガンは「ザン・ゼンデギ・アザディ」。日本語にすると「女性・人生・自由」という意味である。

女性が頭から足までをすっぽりと布で隠さなければならないアラブ圏の国々と違って、イランは歴史的にずっとヒジャブの着用が強制されてきた国ではない。そして長年、女性たちにヒジャブをどこまで厳格にかぶらせるかが、時の政権が保守派かリベラル派かを計る試金石となってきた。

近代化のために一足先にヒジャブ禁止を決めたトルコに倣い、イランは1936年にヒジャブを禁止し、この時も保守派の抵抗に遭った。第2次大戦中のレザー・シャー・パーレビ国王追放後の44年にヒジャブ禁止の法律は廃止され、着用は個人の選択に任された。その後、79年のイラン革命後にホメイニ師がヒジャブ着用強制を定めた。

イラン革命で女性が失ったのは服装の自由だけではない。女性の歌声を男性が聞けばイスラム教に反する行為だと判断され、女性は歌手活動を禁じられた。海水浴場は男女で分けられ、女性は決められた場所以外では水着で泳ぐことも認められない。

懸命に自由を求め続けるイラン女性たち

しかしイランの女性は、いつも工夫して自由を求めてきた。2つの工夫を紹介しよう。まず、女性たちは大学進学を目指している。革命以降、小学校から高校までは男子校と女子校に分けられたが、大学は男女共学だ。結果として大学生の男女比率は女性60%、男性40%となっている。

それでも就職の際には男性が断然優位なのだが、多くの女性は懸命にキャリアを築いてきた。例えば女性は法学を専攻しても裁判官にはなれないが、弁護士を目指す。大統領にはなれないが、議員や大臣を目指すといった具合だ。

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・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

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