中国人と台湾人は、友人になれる
台湾訪問後、日本を訪れて記者会見を開いたナンシー・ペロシ米下院議長 ISSEI KATO-REUTERS
<台湾有事が取り沙汰されるなか、中国人と台湾人は仲良くなれるの?と疑問に思っている人がいるかもしれない。私の体験をお伝えしよう>
米中関係が悪化している。
ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問に中国が猛反発、大規模な軍事演習にまで発展した。その様子は日本でも報じられ、「台湾有事は日本有事」と危機感をあらわにする専門家もいた。
ペロシ議長は日本も訪れ、記者会見ではアジア歴訪の意義を威勢よく語った(写真)。
ただ、当の台湾人の反応を知ったら日本人は拍子抜けするかもしれない。ある台湾の世論調査では6割超が中台の軍事衝突は「心配していない」と回答。私が台湾人の友人に聞いた範囲でも、冷静な意見がほとんどだ。
独立宣言さえしなければ中国は攻めてこない。一方、台湾を守ると言っているアメリカも自国の利益が最優先なので過信は禁物――といった具合に。
ところで、「台湾人の友人」と書いたが、不思議に思った人がいるかもしれない。中国人と台湾人が仲良くなれるの? そんな疑いの声が聞こえてきそうだ。
「国と個人は別」そう頭では分かっていても、なかなか切り離して考えられないのが人の常である。実際、日本人の大半は中国人と台湾人がどう付き合っているのかを知らないのではないか。
せっかくの機会でもあるし、私の体験を紹介してみたい。
私が初めて台湾人に会ったのは80年代後半、東京に来てからだ。アルバイト先で台湾人2人と友人になった。
1人は日本語学校の先輩で、もう1人は明治大学の留学生。当時は台湾人のほうが経済的に恵まれており、着ている服のセンスも違った。そう言えば、缶ジュース1本買うのにも悩む私たち貧乏中国人に、台湾人のクラスメイトがよくランチをおごってくれたっけ。
日本留学の歴史も長い台湾人が「先輩」で、中国人より立場は上だったが、良好な関係だった。実際、私は台湾人の友人たちと国内旅行をしたり、商売の話や、時に政治体制の話でも熱く議論を交わした。
ただ、統一とか独立といった話をしたことはない。そういう時代ではなかった。
今は立場が逆転し、中国人のほうが裕福になった。
しかも若者は以前より愛国的になっている。中国との統一で実利が得られるなら台湾人は親中になるはず。そんな政府寄りの考えを持つ中国人も少なくない。
2022年の日本で、友人になった中国と台湾の若者はどこまで率直に政治の話をしているだろう――。