来日25年のフランス人が気付いた、日本の「あり得ない」裏の顔
先ほど日本は治安がいいと書いたが、その半面、リスクに対する意識が低いとも言える。最近、巨大な駅の構内のコインロッカーのそばに大きな黒いリュックが置いてあった。誰もいなくておかしいと思った私は警備員に知らせたが、「あそこは私が管理する場所ではない」と言われた。
あり得ない答えだが、たぶん警備員に「テロのリスク」の意識がなかったのだろう。与えられた役割以外を自分の判断でやるのに抵抗があったのだとも思う。こうした態度には、責任を取りたがらない昨今の政治家の姿勢が影響しているのではないか。
東京都は今も緊急事態宣言発令中だが、夜に新宿、渋谷や六本木の様子を見に行くと、完全に「ノー・ルール」の世界、まるでパリの郊外みたいだ。マスクを外して路上喫煙、路上飲食をし、ふざける若者たち。
今まで見たことのない光景だが、必ずしも彼らが悪いとは思わない。最近は政治家や権力者が自分たちで決めたルールを破ってしまう例が多いから、彼らが何を言っても説得力に乏しい。ルールを守るかどうかは自己判断だと思う若者も少なくないだろう。
自己判断は必ずしも間違いにつながるものではない。むしろ、自己判断を許せる社会が望ましい。ただその場合、ルールよりも必要なのは人間性、社会意識と道徳(モラル)だと思う。
西村カリン
KARYN NISHIMURA
1970年フランス生まれ。パリ第8大学で学び、ラジオ局などを経て1997年に来日。AFP通信東京特派員となり、現在はフリージャーナリストとして活動。著書に『不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人』など。
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