安倍首相の辞任で分かった、人間に優しくない国ニッポン
私は日本社会が、病気を持つ人も、障がいのある人も、老いも若きも、等しく大事にされ尊重される社会であってほしい。日本人が概して勤勉であることはよく理解しているが、病気や家庭の問題などで職務を十分に全うできない人に対して、時に厳し過ぎる。日本の会社や学校で、そんなにひどい病気じゃないでしょとか、根性を出せとか、怠けているんじゃないの、というような心ない言葉を何度も聞いてきた。
なんて優しくない社会なのだろう、と思った外国人や外国にルーツを持つ日本人は私だけではないと思う。多様性だ、ダイバーシティだと声高に言われるが、それは異文化や宗教、外国語に限った話ではない。たとえ意見の合わない他人でも、体調の悪い人をいたわり、孤立している人には何かできることはないかと言葉を掛けること、それが多様性のある社会への第一歩である。
首相の辞任が、どんな人でも働きやすく、暮らしやすい社会とはどんな社会かを考えるきっかけになればいいと思う。
石野シャハラン
SHAHRAN ISHINO
1980年イラン・テヘラン生まれ。2002年に留学のため来日。2015年日本国籍取得。異文化コミュニケーションアドバイザー。シャハランコンサルティング代表。@IshinoShahran
<本誌2020年9月22日号掲載>
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9月22日号(9月15日発売)は「誤解だらけの米中新冷戦」特集。「金持ち」中国との対立はソ連との冷戦とは違う。米中関係史で読み解く新冷戦の本質。