コラム

「ダイバーシティ」が上滑りする日本よ、真の多様性を実現しよう!

2019年12月07日(土)15時10分
石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)

日本では「多様性への理解」という言葉のインパクトばかりが先行している Mathew Childs-REUTERS

<イランから来日し、日本で働いてきたが「君は日本人じゃないから分からないし、分からなくていい」ともよく言われた。せっかく海外からお客様がたくさん来る機会。日本人の皆さん、今こそ真のダイバーシティを実現しよう>

ラグビーワールドカップの盛り上がりは記憶に新しい。日本各地が海外からのラグビーファンでにぎわっていた。来年は東京オリンピックがある。今年以上に海外からのお客様で日本中がごった返すだろう。

さて、そんな国際色豊かになる日本で、今回はダイバーシティについて考えたい。とてもはやっているこの言葉を、皆さんはどのように捉えているだろう? LGBTQ(同性愛者などの性的少数者)への理解、女性活躍推進といった文脈で使われることが多く、「多様性への理解」とほとんどの方は答えるのではないか。

辞書やネットで検索すると、多様な人材をマネジメントする方法、なんていう定義もある。言葉の定義は、ビジネスでも教育でも、もちろん生活においてもとても重要。でも日本では、言葉のインパクトばかりが先行している。

告白すると、来日前の私は日本をとても国際的な国だと思っていた。世界で評価されている日本製品の素晴らしいイメージから、開かれて国際的な日本を勝手に期待し、疑いすらしなかった。でも来日後、その期待は失望に変わる。イランの国営放送で制作に関わり俳優もやっていた私は、まずメディア関連の職をいろいろと探した。日本は日本語しか通じないので職探しは難航。やっと見つかっても「採用は日本人的なルックスが限定」で、ショックを受けた。

次に、世界に誇る高い技術を持つ日本の物づくりに関わりたかった私は、日本のメーカーに就職することにした。ところが、俳優業を続けられなかった以上にショックなことが起きた。

「業務割り当てもガイダンスもなく黙って机で待機」「業務がなくても、早く来て遅く帰ることを強要されることで無駄に長い就業時間」「育児休暇どころか有給休暇も使えない。休暇には申請書が必要で、しかも上司の承認が必要」「会議には強制参加だが、発言・意見できない」「意見できず、判断をさせてもらえないのに、業績不振の責任を取らされて給料を全社員一律カット」......。

どれも私にとっては全く納得がいかないものだった。説明してくれる人すらおらず、閉鎖的な「村社会」にポツンと取り残され、息苦しさと諦めに沈み込んだ。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 7
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 10
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 6
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story