- HOME
- コラム
- 欧州新首都:ベルリンから世界を読む
- ヨーロッパのデジタルノマドワーカーが実践する「非同…
ヨーロッパのデジタルノマドワーカーが実践する「非同期ワーク」とは?
ベルリン最大級のイノベーション・ハブ「Factory」は、ミッテ地区の元ビール醸造工場を改築し、2014年に開設された。©Factory Berlin
<今、在宅ワークが主流になった後に注目される働き方が話題となっている。それが、デジタル・ノマドが実践する「非同期型ワークスタイル」である>
ベルリンとデジタル・ノマド
ベルリンは、東西の壁の崩壊後から、世界のリモートワーカーや現代の遊牧民に例えられる「デジタル・ノマド」の拠点となり、場所や時間に左右されない働き方を牽引してきた都市である。
インターネットとノートPCがあれば、世界のどこからでも「仕事」ができる、主にデジタル関連の人々の数は増大し続けている。急増するスタートアップ・チームやノマドワーカーのニーズに応えるため、ベルリンでは100以上のコワーキング・スペースが設立されてきた。
中でもベルリン最大級のイノベーション・コミュニティである「Factory」は、現在、市内中心部に2箇所(ミッテとクロイツベルク)とハンブルクに大規模施設を有し、約150のスタートアップ、70カ国から約3,500人のコワーキング・メンバーを受け入れている。
2019年末の時点で、約77万7千人の外国人がベルリンに住んでおり、そのうち約3万3千人がこの年の新規移住者である。人口の21%が外国人で、世界中から起業をめざしてベルリンに来る人々も多い。その経済効果は、世界有数のスタートアップ都市を成長させ、シリコンバレーを超える輝きをベルリンにもたらしてきた。
パンデミック以前から、ベルリンでリモートワークは珍しいことではなかった。ベルリンのデジタル経済は、フリーランサーやノマドワーカーによって成り立っており、彼らはワークライフ・バランスというより、ワークライフ・ブレンディング(働き方と暮らし方の混合)という生き方を実践してきた。
オフィスワーク vs リモートワーク
世界中のパンデミックが突然リモートワークを主流に押し上げたことで、人々はようやくリモートワークのメリットを確信し始めた。欧州のほとんどの人はオフィスに戻ることを望まず、パンデミックが収束した後も、リモートワークの継続を確信している。一方、雇用主はオフィスワークの重要性を再認識し、ZOOMでのコミュニケーションの限界や、オフィスでやりとりされる「小さな会話」や対面の情報交換が、創造性やセレンディピティを生むと信じている。
オフィスへの帰還を主張する雇用主と、リモートワークを望む従業員との架け橋となるのが、ハイブリッド・ワークという折衷案である。しかし、オフィスワークとリモートワークを一定の割合で混合するワークスタイルが、パンデミック以後のスタンダードになるのかは不明である。
現在、何百万人もの人々がリモートで作業しているが、ほとんどの人は特定の時間に作業し、自宅待機し、電話に出て、ビデオ会議に参加する必要がある。今、在宅ワークが主流になった後に注目される働き方が話題となっている。それが、デジタル・ノマドが実践する「非同期型ワークスタイル」である。
存続意義が問われるドイツの公共放送 2022.10.25
ディープフェイクの政治利用とその危険性:ビデオ会議のキーウ市長はデジタル合成だった 2022.07.20
ウクライナ戦争:接続性が紛争を招く理由 2022.04.07
反アマゾン:独立小売業の変革を推進する「アンカーストア」の急成長 2022.03.02
ベルリンの中心市街地で自家用車の利用が禁止されるかもしれない 2022.01.27
ベルリンのコワーキングスペースが隆盛な理由 2021.12.28
メタバースはインターネットのユートピアなのか、現実の悪夢なのか? 2021.11.26