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ドイツで進む「新しいクルマ」のあり方 企業も市民も行政も価値観を変えた
BMWとダイムラーは合弁会社を設立し、5つのモビリティ・サービスを
2019年2月、2つの大手ライバルであるBMWとダイムラーは、それぞれの都市型モビリティ・サービス事業を5つのサービスに統合する合弁会社を設立し、10億ユーロ(約1,246億円)の投資を実行した。
この5つの事業内容を紹介しよう。第1は、AからB地点に移動するためのさまざまなオプションをユーザーに提供し、地元の交通機関のチケットを予約して直接支払い、カーシェアリングからレンタル自転車などを複数組み合わせて移動オプションを提供するREACH NOW(マルチモーダル)である。
第2は、電気自動車のドライバーにむけた充電サービス、CHARGE NOW(充電)である。このサービスを通じて、ドイツ国内および海外の公共の充電スタンド(25か国に100,000を超える充電ポイントがある)を簡単に見つけ、使用し支払うことができる。
第3は、スマホをタップするだけで、顧客はタクシー、プライベート・ドライバー、または最新のeスクーターなどをオファーできるFREE NOW(タクシーやライドシェア配車)である。これは、ヨーロッパとラテンアメリカで2,100万人以上の顧客と25万人以上のドライバーとつながっている。市内の交通量の削減に重要な貢献をしているサービスであるFREE NOWは、ベルリンでは、Uberを超えてタクシーやライド配車の定番となっている。
第4は、駐車場や路傍での駐車を簡素化した革新的なデジタル・パーキングサービスであるPARK NOW(駐車場予約)である。このサービスは、顧客に最適なパーキング・ソリューションを提供する。駐車スペースを一目で見つけ、予約し、駐車時間を指定し、チケットなしで駐車場に出入りし、キャッスレスで駐車料金を支払うことができる。
第5は、スマートフォンを使って、いつでもどこでも、自由に街中のカーシェアリング・サービスにアクセスでき、31の都市で20,000台のクルマが配置され、合計400万人を超える顧客がいるSHARE NOW(カーシェアリング)である。カーシェアリングは、車両の利用率を高めることができるため、都市の車両総数を減らすことができる。メルセデス・ベンツやBMW、ミニ・クーパーなど、ユーザーが望むクルマが選択できるのも魅力となっていて、市場のカバー範囲が拡大している。
ダイムラーのCEOであるディーター・ゼッツェ氏とBMWのCEOであるハラルド・クルーガー氏は、クルマを製造し販売するだけの産業の限界を認識し、デジタル・サービスを組み合わせた都市型モビリティ・エコシステムを創出するために、大手2社だけでなく、スタートアップとの連携を強化しようと考えてきた。ドイツの自動車メーカーは、お互い競い合うだけではなく、共にUberやグーグル、そしてテスラに挑むことを決意したのだ。合弁会社の拠点は、もちろんベルリンである。
今や世界各地に拡張しているドイツのカーシェアリング・ビジネス
ドイツの自動車メーカー大手にとって、モビリティ関連の新興企業によってもたらされた脅威は、彼らの100年前のライバルよりはるかに大きな影響を与えている。BMWとダイムラーによるジョイント・ベンチャーは、世界に約6,000万人いる彼らの顧客に向けたモビリティ・エコシステムをめざすものだ。
ドイツの主力自動車会社が世界に先がけて始めたカーシェアリング・ビジネスは、ドイツ国内にとどまらず、今や世界各地に拡張している。中でも、BMWが最初に市場参入し、現在ダイムラーとの合弁会社として運営されているSHARE NOWは、ここベルリンでは多くの支持を得ている。「フリー・フローティング・カーシェアリング」と呼ぶこのサービスは、クルマが街中のどこにでもあることを意味している。市内のどこにいても、半径200メートル以内にクルマが見つかる、というのが謳い文句で、事実、急にクルマが必要になれば、専用のスマホ・アプリで周辺のクルマを探し、スマホのアプリがクルマのキーになり、面倒な手続き不要でクルマをシェアできる。
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