「スマホはある」「四季を体験したい」新人ホームレスが最も不便に思うことは?

宇海くん(左、仮名)が「師匠」と称する征一郎さん(右、仮名)との記念写真
<大阪から上京し、ホームレスの「師匠」を訪ねてきた男性。彼は「新人」として、一体どのようなホームレス生活を送っているのか。在日中国人ジャーナリスト趙海成氏による連載ルポ第28話>
この1年間、雨が降らない限り毎週月曜日に、食料品を持って荒川上流の河川敷へホームレスの征一郎さんを訪ねに行くようにしている。
今年の3月、快晴の朝。いつもと同じく 9時にまずコンビニに行き、コーヒーやサンドイッチなどを買い、自転車で荒川上流へ向かった。
※征一郎さんの参考記事(第19話):「ホームレスになることが夢だった」日本人男性が、本当にホームレスになった
征一郎さんのテントの前に見知らぬ人
征一郎さんが住む橋脚の下に到着すると、征一郎さんの姿は見えず、テントの近くに見知らぬ人が立っていた。私はおかしいと思った。
征一郎さんの話によると、以前、奇妙な若者が彼のテントの近くをぶらぶらし、雑草に火をつけていたこともあるらしい。
いま目の前にいる人は、30代に見える。もしかして......。
余計なことは考えないで、急いで自転車を押して向かった。
その若者に「おはようございます!」と挨拶してから、率直にこう尋ねた。
「あなたは誰ですか。ここで何をしているのですか」
彼は答えた。
「僕は大阪から来たホームレスの新人で、先輩である征一郎さんの弟子になるために昨日ここに来ました。今、征一郎さんは寝ているので、僕は起きるのを待っているんです」
その時、征一郎さんのテントから10メートルほど離れたところに、小さなテントが増えていることに気づいた。なるほど。これで安心だ。
若者の名前は「宇海」といい、東京でホームレスになるために自ら付けた名前だと教えてくれた。
※宇海くんの参考記事(第27話):「今がチャンス」ホームレスになるため、40歳を過ぎて大阪から上京した男性