オンライン詐欺被害総額は最大370億ドルに...東南アジアで広がる詐欺被害の裏で拡大する人身売買、撲滅対策とは?
東南アジアのデジタル経済は世界最速規模で成長している。2016年以来、域内の主要経済国ではネット利用者が2倍以上に増え、電子商取引や電子決済が加速。流通取引総額(GMV)は2030年までに1兆ドルに達する見込みで、その経済的潜在力は極めて大きい。
同時に、犯罪組織にとって絶好の環境も生まれている。Eコマースやモバイルバンキングを可能にするインフラは、サイバー犯罪、マネーロンダリング、人身売買のツールでもある。
東南アジアがオンライン詐欺の拠点となったのは、緩い規制やはびこる汚職、抜け穴だらけの国境管理に付け込む犯罪組織のせいだ。国連の推定によれば、2023年の東アジア・東南アジアでのオンライン詐欺被害総額は最大370億ドルに上った。
犯罪組織は奪い取った利益をフィンテック経由で資金洗浄している。
監禁状態の強制労働の被害者は、ミャンマーだけで少なくとも12万人。カンボジアでは10万人に上る。
インターポールも作戦展開
サイバー奴隷問題は単なる地域的危機ではない。グローバルな経済と安全保障にとっての脅威だ。犯罪組織は世界各地から人材を集め、世界中で大金をだまし取って金融システムを不安定化させている。
規制の強化は、貧困解消に貢献している東南アジアのデジタル経済の足かせになると懸念する声もある。だが、経済成長とアカウンタビリティー(説明責任)は共存可能だ。
シンガポールは20年に施行した決済サービス法で、フィンテック企業に資金洗浄・テロ資金供与対策を義務付けた。それでも世界有数のフィンテックハブの座は揺るがず、22年には総額40億㌦規模の投資を呼び込んでいる。地域のほかの国々も同様の対策で、人身売買業者によるデジタル金融の悪用を阻止すべきだ。