オンライン詐欺被害総額は最大370億ドルに...東南アジアで広がる詐欺被害の裏で拡大する人身売買、撲滅対策とは?
地元当局が賄賂と引き換えに、強制労働施設の存在を見逃しているケースもある。詐欺拠点の解体を目指す司法機関の国際協力には大きな課題があり、国境を超えた取り締まりには効果がないとの批判もあるが、各国司法当局が連携すれば、管轄区域外でも強制捜査を行って人身売買業者を逮捕することができる。
国際刑事警察機構(インターポール)が展開する作戦では、ミャンマーやカンボジアで大勢を逮捕し、犯罪拠点を摘発している。こうした取り組みを世界規模で拡大し、情報共有や活動資金提供を強化すべきだ。
責任を問う体制づくりを
犯罪組織の活動領域は今やオンライン詐欺にとどまらない。同様の勧誘テクニックにだまされた女性たちが、生殖を強制されている。
2月、タイ人女性100人以上が被害を受けた事例が明らかになった。「代理母募集」に応じてジョージア(グルジア)に渡った女性たちは現地で軟禁され、強制的に卵子を採取されていた。サイバー奴隷同様、パスポートを取り上げられ、逃げたら処罰されると脅されていたという。
対策を実行しなければ、犯罪ネットワークは拡大を続け、犠牲者はさらに増える。危機に対応するには、各国政府やテクノロジー企業、国際機関の組織的取り組みが不可欠だ。
各国政府はサイバー奴隷を違法化し、詐欺拠点を野放しにする国に制裁を科す必要がある。司法当局は国境を超えた捜査や人身売買に絡む犯罪人引き渡し協定を拡大すべきだ。
金融機関は詐欺ネットワークとの関連が疑われる取引を凍結し、高リスク地域のフィンテック企業のデュー・デリジェンス(適正評価)要件を強化しなければならない。