トランプも恐れる「厄介な事態」に?...イスラエル・トルコが虎視眈々と狙う「新生シリア」で何が起きるのか

ALLIES COLLIDE: WHAT NEXT?

2025年4月23日(水)14時32分
トム・オコナー(外交担当副編集長)

イスラエルのネタニヤフ首相

MAYA ALLERUZZO-POOL-REUTERS

アッシャラアはイスラエルに対しては慎重路線を採用した。シリア領内への越境攻撃を非難しつつ、新生シリアは歴史的な敵であるイスラエルに脅威を及ぼさないと誓ったのだ。その一方で、安全保障ではトルコを頼りにする姿勢も見せている。

トルコはシリア内戦中、HTSには曖昧な態度を取る一方で、HTSのライバルである反政府組織シリア国民軍(SNA)を大っぴらに支援していた。それでも内戦終結後、HTS主導の暫定政権下でトルコとの2国間関係が改善したのは明白だ。

今ではシリアにおけるトルコの役割の拡大(多額の投資がそれをさらに後押ししている)に、イスラエルが神経をとがらせていると、アビブは指摘する。

「トルコは見返りとして、シリアに軍事的な足場を持つことを要求するとみられ、それがイスラエルにとっては脅威になり得る」と語る。「トルコもイスラエルにシリア領内から撤退するよう求めている。エルドアンは既に少なくとも2回、軍事行動をちらつかせてイスラエルを脅した」

イスラエルは今もアッシャラアを「ISのメンバー」と見なしていると、アビブは言う。「(シリアでは)クルド人勢力は今やイスラエルの信頼厚い盟友になっている」

シリアの少数派であるイスラム教系のドルーズ派もイスラエルと兄弟同盟を結ぶ可能性があると、アビブは指摘する。こうした状況では、シリアは事実上分裂しかねない。

暫定政権の支配地域、トルコの基地がある北部、イスラエルが居座る南部、そして北東部のSDFの自治地域と、シリア領内には既に見えない境界線が引かれている。

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