今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら呆れるトランプの政策
WHY CHINA WILL PREVAIL
体制間競争の勝者は決まった
貿易と外交政策の大転換にも戸惑いが広がる。4月2日、トランプは各国に課す相互関税を公表し、アメリカに「解放の日」が到来したと宣言したが、その2週間ほど前に私が参加した会合では、出席者たちから困惑の声が飛び出した。
アメリカはなぜ自国と世界に大きな繁栄をもたらした多国間貿易体制を壊したいのか。他国に関税をかければ国内の製造業が劇的に復活し、雇用が激増するという発想は夢物語としか思えない。どうして同盟国を見限り、ロシアに擦り寄るのか。
重要なのは、こうした声が正しいか否かではない。アメリカの政府は無能で社会は分断しているという認識が中国で広まり、人々がその認識を鏡として、自国の現在と未来を再評価していることが重要なのだ。
現実には中国では指導者の多くがイデオロギーに固執し、汚職が蔓延し、今も政治家が粛清され、情報は統制され、科学者は知的自由を享受できていない。市場は不公平な規制に縛られ、産業政策により外国企業は不利な立場に追いやられている。
いずれも国の発展と外交を妨げる要因になりかねない。だが「2025年のアメリカ」というレンズを通すと、中国の体制は違って見える。
中国の体制ナショナリストにとってトランプは天の恵みだ。反リベラルな大統領のおかげで、アメリカは中国の政治体制を非難しなくなったからだ。トランプ政権下でアメリカの統治制度と経済と同盟関係が弱体化すれば、「再び偉大」になるのは中国かもしれない。また、トランプが多国間貿易を攻撃すれば、中国が多国間貿易の担い手として評価されやすくなる。