動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができているのは「米国でなく中国」である理由
China's Ready for a Trade War. The U.S. Isn't. Here's Why | Opinion
アメリカ単独の経済的威圧はもはや効果なし
米政府の関税戦略の根底には、不都合な真実がある。アメリカ単独の経済的な威圧が、以前のような効果を持たなくなってきたことだ。
2017年には「てこ」として機能していた手段が、今では同盟国を遠ざけ、国内産業を混乱させ、アメリカが制しようとしている多極化の流れをかえって加速させる危険をはらんでいる。
かつてはアメリカと歩調を合わせて中国に対抗していた欧州も、足並みが乱れ始めている。トランプ関税を世界貿易機関(WTO)に提訴した中国と歩調を合わせるかのように、EUはトランプ関税への報復関税を表明した(編集部注:4月9日にアメリカが上乗せ関税を90日間停止する方針を示すと、EUは報復関税の発動を停止)。
ブラジル、トルコ、南アフリカといったグローバルサウスの国々も、中国への接近を強化してきた。そこには投資、市場アクセス、そして「内政不干渉」を掲げる中国の魅力がある。
そんな中、スケール(規模)、サプライチェーン支配、イノベーションといったアメリカの伝統的な優位性が揺らぎ始める。
中国は2020年以降、半導体生産を3倍に拡大し、世界最大のEV製造国となり、環境技術分野での影響力も急拡大させてきた。2023年には、世界の太陽光パネル市場の8割超、バッテリー市場の6割近くを中国企業が占めた。