動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができているのは「米国でなく中国」である理由
China's Ready for a Trade War. The U.S. Isn't. Here's Why | Opinion
バイデン政権も根本にある発想は同じだった
金融分野でも、中国は静かに対抗手段を構築している。通貨スワップ協定のネットワークは、アルゼンチンからアラブ首長国連邦(UAE)まで40カ国以上に広がった。BRICSの拡大により、中国は「脱ドル化」を推進する足場も手にしている。
これらの動きはまだ初期段階にあるが、そのメッセージは明白だ。アメリカの金融覇権はもはや不変ではなく、中国は「新たな時代」への準備ができている――。
もちろん、中国にも問題は山積している。不動産市場の減速、若年層の高失業率、人口減少の足音......。だが注目すべきは、そうした外的ショックを吸収する中国の「耐性」の高さだ。一方で、アメリカの農家、製造業、中小企業は、長引く対立のコストに苦しんでいる。
問題の核心は、戦略の迷走にある。関税は政治的には効果的なパフォーマンスだが、長期的な経済戦略の代替にはなり得ない。関税は同盟国を遠ざけ、市場を歪め、サプライチェーンや物価にまで影響を及ぼす。しかも、次世代産業の主導権を取り戻すための道筋は、そこからは見えてこない。
激しい脅し文句こそなかったが、バイデン政権も第1次トランプ政権の関税をおおむね維持した。アメリカの根本にある発想は変わっていない。
アメリカは今なお、経済的圧力だけで中国の行動を変えられると信じているのだ。しかし、その前提こそがすでに破綻しており、中国はそれを見抜いている。
いま我々が目にしているのは、中国の「後退」ではなく「再編」だ。アメリカが旧来の経済的な武器に手を伸ばす一方で、中国は新たな道具を整えつつある──よりネットワーク化され、分散され、おそらくは先々でも通用する道具だ。
問われるべきは、関税によって貿易戦争に勝てるかどうかではない。経済戦略の「新しい形」に対応する洞察力を、アメリカが持てるかどうかである。
[筆者]
イムラン・ハリド(Imran Khalid)
戦略地政学アナリスト。さまざまな国際ニュースメディアで国際情勢に関するコラムを執筆している。
(本稿で示された見解は筆者個人によるものです)

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