アサドが消えても混乱続く...シリア国民が考える、復興に必要なもの

THE AFTERMATH OF A TRAGEDY

2025年3月21日(金)18時50分
伊藤めぐみ(ジャーナリスト)

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ダマスカスの「251収容所」にある壁が赤色に全面塗装された居房 MEGUMI ITO

「軍事情報収容所」の実態

住宅街の中にあるその建物は、「251国家安全支部(通称アル・ハティーブ)」と呼ばれる収容所である。ここに収容されていたのは政治犯だ。アサド政権は、アサドを批判したり、政権を批判する政治活動をした人物をこのような収容所で拷問していた。殴る蹴るはもちろんのこと、電気ショックを加えたり、天井からつるしたり、性的暴行やレイプも行われていた。このような施設はシリア国内にいくつもあるが、この251収容所は「地上の地獄」と呼ばれ、人々から恐れられていた。

建物の前では、4人の兵士が見張りに就いていた。彼らはアサド政権を倒し、暫定政権を担うシャーム解放機構(HTS)の戦闘員である。かつていた収容者たちは既に解放され、HTSが証拠の保存のため収容所を管理していた。


「明かりは持ってきたかい?」

案内してくれた軍人が言うとおり、地下の階は電気が通っておらず真っ暗だった。携帯電話のライトを頼りに見渡すと、薄暗い中にぼんやりと鉄の扉の付いた小部屋がいくつも見えた。部屋は幅1メートル、奥行き2メートルほどの広さで、壁が赤や黒、黄色に塗られていた。

「この部屋には14人入れられていた。座れないから基本は立ったままで、ほかの人たちと交代で座って休めるようにしていた」

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