得票率は前回比で倍増、約21%に...極右政党AfDとドイツ政治の危うい行方

No Longer on the Margins

2025年3月6日(木)10時27分
ポール・ホッケノス(ベルリン在住ジャーナリスト)

newsweekjp20250304044843-69eba56e17650a493109e500bca4627a8412acb2.jpg

ワイデル共同党首率いるAfDは過去最高の得票率で第2党に浮上 SEAN GALLUP/GETTY IMAGES

CDU党首で次期首相の最有力候補とされるフリードリヒ・メルツも、AfDに踊らされた。政権を握ってからも、きっとそうだろう。

難民認定申請者による襲撃事件が相次いだこともあり、メルツは今年1月下旬に選挙戦術の大胆な転換に踏み切った。得意の経済政策を棚に上げ、AfDに追従する形で移民問題を争点化した。


1月末にはAfDの支持を見込んで移民対策強化の法案を連邦議会に提出。さすがに否決されたが、旧ナチスに連なる極右勢力とは絶対に手を組まないという主流派政党の不文律(ドイツでは「防火壁」と呼ばれる)がついに破られたという事実は重い。

メルケル全盛期に結成

CDUはAfDの、そして欧州各国の極右政党が仕掛けた罠にはまった。このままだと、極右に屈した中道右派政党は欧州全域で傍流に追いやられ、遠からず極右が主流に躍り出るだろう。

今回の総選挙でCDUは第1党となったが、得票率は28.6%で、過去2番目の低さだ。フランスやイタリア、オランダ、中欧諸国でもそうだが、主要政党の右旋回で得をするのは極右だ。今回の選挙でも、CDUと社会民主党(SPD)の支持層の一部がAfDに流れている。

CDUが勝利の美酒に酔うのは間違いだ、と断じたのは全国公共放送局のARD。「得票率は最悪時(前回の約24%)より回復したが、メルケル政権時代の13年に獲得した約42%には遠く及ばない。それはなぜか」と彼らは問う。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、イラン産原油タンカーの海上検査を検討

ビジネス

焦点:セブン、株主還元で株価浮上狙う 本質的な価値

ビジネス

英2月建設業PMIは44.6、20年5月以来の低水

ワールド

トランプ政権、ウクライナ避難民の在留資格取り消し計
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行為」「消費増税」に等しいとトランプを批判
  • 4
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 5
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 10
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 8
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中