得票率は前回比で倍増、約21%に...極右政党AfDとドイツ政治の危うい行方
No Longer on the Margins
CDU党首で次期首相の最有力候補とされるフリードリヒ・メルツも、AfDに踊らされた。政権を握ってからも、きっとそうだろう。
難民認定申請者による襲撃事件が相次いだこともあり、メルツは今年1月下旬に選挙戦術の大胆な転換に踏み切った。得意の経済政策を棚に上げ、AfDに追従する形で移民問題を争点化した。
1月末にはAfDの支持を見込んで移民対策強化の法案を連邦議会に提出。さすがに否決されたが、旧ナチスに連なる極右勢力とは絶対に手を組まないという主流派政党の不文律(ドイツでは「防火壁」と呼ばれる)がついに破られたという事実は重い。
メルケル全盛期に結成
CDUはAfDの、そして欧州各国の極右政党が仕掛けた罠にはまった。このままだと、極右に屈した中道右派政党は欧州全域で傍流に追いやられ、遠からず極右が主流に躍り出るだろう。
今回の総選挙でCDUは第1党となったが、得票率は28.6%で、過去2番目の低さだ。フランスやイタリア、オランダ、中欧諸国でもそうだが、主要政党の右旋回で得をするのは極右だ。今回の選挙でも、CDUと社会民主党(SPD)の支持層の一部がAfDに流れている。
CDUが勝利の美酒に酔うのは間違いだ、と断じたのは全国公共放送局のARD。「得票率は最悪時(前回の約24%)より回復したが、メルケル政権時代の13年に獲得した約42%には遠く及ばない。それはなぜか」と彼らは問う。