「2国家解決」で歴史に名を残したい、2人の思惑が合致するとき...サウジの「外交Xデー」はあるのか?

HOUSE OF CARDS

2025年1月16日(木)15時52分
トム・オコナー(外交問題担当副編集長)

トランプもムハンマドもしばしば中東和平の仲介役を自任するが、皇太子は脱石油依存などを目指す経済改革案「ビジョン2030」を推進する一方、パレスチナ国家樹立の立役者として歴史に名を残したいという思惑もある。

「安全保障条約には必ずしもイスラエルとサウジの関係正常化が含まれるわけではない。合意実現の取り組みは慎重さを要する。サウジは常にパレスチナの権利を強固に支持してきた。この根本問題をおろそかにすれば猛反発を招きかねない。サウジはイスラム世界の盟主なのだから」


アルハメドもアンサリもシュダディもこの立場は揺るがないとみていた。サウジの退役軍人で駐米武官を務めたアブドゥーラ・ビン・ファラ・アル・シャヤも、アメリカとサウジは第2次大戦以降、たいてい妥協点を見いだしてきたと語った。

「両国関係のこうした歴史を思えば、トランプと彼の(政権の閣僚や政治顧問など)政治チームはこの(中東和平への)道のりが協力して共通の利益を実現することに満ちていると理解しなければならない」

さらにトランプ政権は「サウジとの誠意ある協力が重要であることを認識すべきだ。サウジはアラブ世界とイスラム世界、国際社会で主導的地位にある。中東での衝突・紛争、特にパレスチナとイスラエルの衝突において、政治や安全保障を含む全ての分野で戦略的パートナーとして接するには、それが必要だ」という。

「トランプと彼の政治チームは、この問題におけるサウジの立場は公正かつ率直で議論の余地がないと理解しなければならない。(サウジは)この件について自国の歴史的かつ公正な立場の安定にこだわり、イスラエルがアラブ和平イニシアチブを受け入れ、血なまぐさい衝突を終わらせるべきだと国際会議の場で繰り返し主張してきた」

だがネタニヤフは「イニシアチブの受け入れを拒んでおり、サウジはトランプがこの問題で歴史に残るような立場を取ることを願っている」。

そのためにはトランプは「交流を活発化して無益な先送り外交をやめ、政治チームをサウジを含め全ての当事者と本格的に協力させ、この悲痛な紛争の効果的かつ公正な解決・終結に直接寄与する」べきだと、シャヤは語った。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

国内超長期債の増加幅は100億円程度、金利上昇で抑

ワールド

ウクライナ、中国企業3社を制裁リストに追加

ワールド

トランプ米大統領の優先事項「はっきりしてきた」=赤

ワールド

イスラエル、ガザで40カ所空爆 少なくとも30人死
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 6
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 7
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 8
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 9
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 10
    トランプに弱腰の民主党で、怒れる若手が仕掛ける現…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 6
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中