スパイを国民のヒーローに...プーチンの巧妙な「心理作戦」の真相
GONZO INTELLIGENCE
昨年7月にはDHLの航空貨物コンテナに爆弾が仕掛けられ、ドイツのライプチヒで火を噴く事件が起きた。背後にはロシアの工作員がいた疑いがあり、アメリカ行きの貨物便を空中で爆破する予行演習だった可能性が高いとされる。
ポーランドやイギリス、チェコ、リトアニアなどで起きた放火事件にもロシアの影がちらつく。
こういうものがロシア流の「ハイブリッド戦争」だ。アメリカ国際法学会が17年に発表した報告書によれば、この戦略を立案したのはロシア連邦軍の参謀総長を務めるワレリー・ゲラシモフだ。
情報戦は安上がりで効果絶大
ゲラシモフは13年の論文で、自らの戦略を西側諸国の東方拡大に対する「非対称的」な対抗と呼んだ。そして政治的・戦略的な目標を達成する非軍事的手段が増えているうえに、「その有効性はしばしば武力の行使を上回る」とした。
具体的手法は、情報操作や宣伝活動、破壊工作、西側諸国の政党への潜入や資金提供から、ロシア軍機による領空侵犯やGPS信号の妨害まで多岐にわたる。実際、22年2月のウクライナ侵攻以来、こうした活動の頻度は増えている。
コフによれば、西側諸国が一致団結してウクライナ支援に回る事態はロシアにとって想定外だった。それで彼らは「非軍事的」な手段にも頼らざるを得なくなった。